【神尾寿のアンプラグド特別編】Suica/PASMO相互運用開始。飛躍する首都圏の公共交通&電子マネー

自動車 社会 社会

3月18日、首都圏の私鉄・地下鉄やバスで利用できる共通IC交通乗車券「PASMO」のサービスが開始した。

このPASMOはソニーの非接触IC「FeliCa」を用いたもので、基本的な仕組みはこの分野の先達であるJR東日本の「Suica」と同じだ。私鉄・地下鉄・バスなど公共交通のIC乗車券として利用できるほか、事前にチャージ(入金)したお金を決済で使うプリペイド式の電子マネー機能を備えている。

さらに、今回PASMOの目玉になっているのが、先行するSuicaとの相互運用機能だ。PASMOとSuicaはサービス開始当初から相互利用を前提にしており、Suicaで私鉄・バスに乗ったり、PASMOでJR東日本の電車に乗ることができる。電子マネーも同様に、Suica電子マネー加盟店でPASMOを使う、逆にPASMO電子マネー加盟店でSuicaを使うこともできる。相互利用はSuicaやPASMOのカードだけでなく、おサイフケータイ向けの「モバイルSuica」でも可能だ。

首都圏在住者はSuicaかPASMOのどちらかを所有していれば、現金いらずで公共交通が使える上に、駅や駅周辺の商業施設でもキャッシュレスで買い物ができることになる。公共交通を使うことが、ますます便利になるのだ。


◆Suica/PASMO相互利用開始で、交通の歴史が変わる

Suica/PASMOの相互利用がスタートした18日には、新宿駅にて「首都圏ICカード相互利用サービス開始セレモニー」が開催された。

登壇したのは、JR東日本社長の清野智氏、PASMO協議会鉄道代表(関東鉄道協会会長、京成電鉄会長)の大塚弘氏、PASMO協議会バス代表(日本バス協会代表取締役会長、神奈川中央交通代表取締役会長)の齋藤寛氏、国土交通省関東運輸局長の大藪譲治氏。セレモニーはJR東日本とPASMO協議会の共催であり、PASMO開始というよりも、首都圏がひとつのIC乗車券システムでシームレスに繋がることにフォーカスした内容だった。

「SuicaとPASMOで首都圏のほとんどの鉄道・バスに乗れる。さらに(電子マネーで)買い物をすることもできる。2007年3月18日という日は、後年から振り返れば、交通にとって(歴史的に)意義深い日だったと思える時が必ずくるでしょう」(JR東日本社長の清野智氏)

すでにJR東日本のSuicaはカード型のSuicaと、おサイフケータイ向けのモバイルSuicaをあわせて1900万枚以上の発行数を誇る。PASMOは今後3年間で800万枚以上の発行が目標だ。さらにSuica/PASMO相互利用開始で、これまで不可能だったJR/私鉄の連絡定期券の利用が可能になり、今までIC乗車券が“使いたくても使えなかった”利用者の需要増も期待できる。今後数年で、首都圏在住者の大半がSuica/PASMOのいずれかを所有することになりそうだ。


◆狙いはレールサイド経済圏の活性化

Suica/PASMO相互利用開始にあわせて、首都圏の大手鉄道事業者のビジネスも活性化している。特にSuicaを推進するJR東日本と、PASMO協議会で電子マネーのアクワイアラ(加盟店開拓事業)まで行う大手私鉄7社:小田急電鉄、京浜急行電鉄、西武鉄道、東京急行鉄道、東京地下鉄、東京都交通局、東武鉄道は、Suica/PASMOを様々な事業領域で活用しようとしている。

まず、JR/私鉄各社が積極的に推進しているのが、自社のクレジットカードビジネスとSuica/PASMOの連携だ。

JR東日本や私鉄各社が発行するハウスカードは、それぞれSuica/PASMOと紐づけることで、自動改札機でカード残額が足りないと自動的に入金する「オートチャージ機能」を持っている。それぞれ独自のポイントサービスや他事業者とのポイント/マイル交換の機能も用意して、ハウスカードの会員増加と稼働率拡大を狙う。Suica/PASMOの普及をテコにして、クレジットカード事業を拡大しようとしているのだ。

さらに住宅開発事業まで手がける大手私鉄では、公共交通事業と連携して沿線の経済圏をPASMO電子マネーやポイントサービス、クレジットカードビジネスで囲い込もうとしている。ロードサイドならぬ、レールサイド経済圏の構築だ。

「沿線の住宅・商業地開発では、『駅と駅周辺』を活性化するのが重要です。地元商店街や自社の駅商業施設と連携して、(大規模駐車場を持つ)郊外型SCに沿線消費者が流出しないようにしなければならない」(大手私鉄幹部)

そのためにPASMO電子マネー機能を沿線に普及させて、ポイントや各種優待サービスで消費者を「囲い込む」のである。鉄道沿線に経済圏を作れば、平日だけでなく休日の利用客増加も見込める上に、グループの商業施設部門の収益拡大にも期待できる。私鉄各社のPASMO電子マネーへの取り組みが、かなり力の入ったものになるのは間違いない。

Suica/PASMOの相互利用開始は公共交通の利便性を飛躍的に高めて、レールサイド経済圏の拡大と活性化にも繋がる。中長期的にみると、首都圏一般消費者の「クルマ離れ」をさらに加速させる要因になりそうだ。
《神尾寿》

編集部おすすめのニュース

特集