【神尾寿のアンプラグド】ケータイ向けテレビ 車業界も注目する価値

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携帯電話の番号持ち運び制度(番号ポータビリティ・MNP)の開始日が、10月24日に決定した。携帯電話業界ではこの数年、MNPに向けて着々と準備されてきたが、いよいよ「本番」が間近に迫る。

MNPに向けて携帯電話キャリアはあの手この手の“目玉商品”を用意している。昨年から話題になっているのは、携帯電話でデジタル音楽を楽しむ「音楽ケータイ」の分野だが、音楽の次として注目されているのが、携帯電話向けのテレビ機能だ。

◆秋以降「ワンセグ対応」が進む

携帯電話向けテレビで注目されているのが、今年4月からスタートしたモバイル向け地上デジタル放送「ワンセグ」だ。これは固定テレビ向けの地上デジタル放送(12セグ)をそのまま携帯電話などモバイル機器で受信しやすいようにしたもので、画質は固定テレビより劣るが、移動中でも見られるのが特徴だ。

番組内容が固定テレビと同じサイマル放送という事もあり、携帯電話だけでなく、任天堂の『ニンテンドーDS』やソニーのノートPC『VAIO Type T』など様々なモバイル機器が対応している。またカーナビでも、12セグが映らないエリアでの補完として、ワンセグを使う機器が増えている。

ワンセグ対応の携帯電話は、固定テレビで人気の「アクオス」の名を冠するボーダフォン向けの『アクオスケータイ905SH』(シャープ製)、au向けの『W41H』(日立製作所製)や『W33SA /SA II』(三洋電機製)などが売れ筋。NTTドコモ向けの『P901iTV』(パナソニックモバイルコミュニケーションズ製)も、他キャリアより高価な価格設定ながら、すでに10万台以上を販売したという。ドコモでは今秋の新端末のうち「4−5台はワンセグを載せていくつもりで計画中」(中村維夫・NTTドコモ社長)だ。

とはいえ、ワンセグの訴求力には地域格差もある。すでに全国の主要都市ではNHKと民放各社のワンセグ放送が始まっているが、地方にいけばワンセグ放送そのものが始まっていない地域もあるのが現実だ。

その状況下で各キャリアがワンセグ端末の投入を急ぐのは、大票田である都市部のニーズをいち早く押さえておく必要があるからだ。MNPが、各キャリアのワンセグ対応の背中を押しているのである。全国規模で見れば、ワンセグニーズの広まりは「これから」の段階。来年以降も注目の機能になるだろう。

◆米国で始まる「MediaFLO」に注目

携帯電話キャリアの付加価値競争の影響もあり、日本ではまず「ワンセグ」が普及する。しかし、ワンセグはもともと固定テレビ向けの仕組みや番組編成を流用するため、携帯電話などモバイル向けのコンテンツビジネスとの親和性が必ずしもよいとは限らない。

そこで今後が注目される“もうひとつのモバイル向けテレビ”が、米クアルコムが推進する「MediaFLO」である。これは携帯電話やクルマ向けに最適化した放送技術を用いており、ブロードキャスト型のテレビ放送だけでなく、端末側のメモリーやHDDに番組コンテンツを一時保存する「クリップキャスト(蓄積型放送)」にも対応する。

またワンセグに比べると、電波が弱い時の画質劣化が少なく、高速移動中の受信にも強い。さらにワンセグの弱点であるチャンネル切り替えの遅さも、MediaFLOでは技術的に克服されている。ワンセグと比較して、携帯電話やクルマで利用しやすい技術なのだ。

クアルコムではMediaFLOの普及に注力しており、北米では年内に商用放送が始まる。当初は携帯電話向けであるが、当然ながら、リアエンタテイメントシステムなどクルマでの受信も想定しているという。北米市場のクルマ向け放送サービスというと、衛星ラジオのXMラジオが注目されているが、将来的にはMediaFLOも注目株になり得るだろう。

一方、日本ではMediaFLOの実現には総務省から電波の割り当てが必要であり、今のところ商用サービス実現のめどは立っていない。しかしクアルコムの第2世代のMediaFLO対応チップは広範なUFH周波数帯から自由に使用周波数を選べるようになっている。さらにこの第2世代MediaFLOチップは、海外で主流のデジタル放送DVB-Hや日本のワンセグ受信機能も内包するという。

もしMediaFLOに周波数が割り当てられれば、携帯電話やカーナビメーカーは「ワンセグ+α」としてMediaFLO機能を搭載できるようになる。また北米でMediaFLOが広まれば、同じチップで日米両方のサービスに対応できる可能性もある。

日本でのMediaFLO実現に向けては、クアルコムジャパンとKDDIが共同で企画会社を設立しているほか、ソフトバンクもMediaFLOの企画会社を作っている。周波数の割り当てがどうなるか不分明なところもあるが、北米市場では商用サービスが始まることもあり、自動車業界関係者も注目しておいて損はないだろう。

《神尾寿》

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