新開発した砂浜清掃器具を用い、今年度だけで全国20カ所の砂浜をキレイに清掃するというホンダの『ビーチクリーンボランティア活動』は、ホンダの現役社員10名とOB社員5名によって行なわれる。
OBスタッフはホンダのボランティア募集に応募してきた人たちで、ボランティアキャラバンが出向いた砂浜に近いところに住んでいる人が入れ替わりで清掃に参加するという。
ボランティアスタッフの一人、田中正之さん(67)は、本田技術研究所に勤めていたときはATV(四輪バギー)の開発に携わっていた人物。福井威夫社長より先輩格で、前社長の吉野浩行相談役とほぼ同期という、ホンダが世界に羽ばたいた風雲の時代を駆け抜けた。今も愛車のインスパイアを駆ってドライブを楽しむアクティブ派だ。
ボランティアではATVのライダーを務めるという。ボランティアに参加する前に、ホンダ系のレインボーモータースクールで講習を受けた田中さん。「ホンダ時代はATVを開発したりライディングしたりしていました。講習を受けたら現役の頃の感覚が甦ってきて、楽しくなりました」という。
「海岸は人間の心を安らかにする場所。そこをキレイにするのは本当に楽しみです。定年退職でホンダを離れてから7年になりますが、こんなかたちでまたホンダとともに活動できるとは嬉しいですね」(田中さん)
田中さんのようなOB社員が大勢、日本各地で海岸美化に参加する。近年、定年延長や高齢者の再雇用などが話題になっているが、OBが退職した会社のボランティア活動に集うというのは珍しい。かつて“偉大なる中小企業”と呼ばれ、家族主義を標榜していた時代のホンダに生きた世代の人たちならではの“ホンダスピリット”とでもいうべきか。