【神尾寿のアンプラグド】モバイルSuica、陣取り合戦

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2月7日、東日本旅客鉄道(JR東日本)社長会見の席上にて、同社のおサイフケータイ向けサービス「モバイルSuica」の利用者が2万人を突破していると明かされた。同サービスは1月28日にスタートしたばかりであり、利用できるのは東京圏・新潟・仙台地域のみ。おサイフケータイ対応機も全国で市場の1割に満たない。それらを鑑みた上で、サービス開始後2週間での2万人突破は、充分に快挙と言えるだろう。

◆利用のハードルが高いモバイルSuica

しかも、モバイルSuicaはサービス利用に際しての前提条件が多い。

まず、対応するおサイフケータイはJR東日本の通過性能試験をクリアした機種のみになる。JR東日本は駅改札口の混乱を招かないために、かなり厳しい試験を実施しており、最新機種の中にもモバイルSuica非対応機種がある。現在、公表されている対応端末は、NTTドコモが9機種、auが5機種で、ボーダフォンは現時点で対応機種がない。

モバイルSuica対応機種を持っていても、それだけではサービスが利用できない。モバイルSuicaの利用には、JR東日本のクレジットカード「Viewカード」が必要だ。同じくJR東日本が発行するView提携カードは利用可能だが、他社のクレジットカードは現時点で利用できない。また、未成年者などクレジットカードが発行されないユーザーも利用対象外になる。

このように利用開始のハードルが高くても、モバイルSuicaの出だしが順調なのは、それだけユーザーの期待とニーズが高いからだろう。実際、筆者も利用しているが、モバイルSuicaは利用登録さえ終われば、非常に便利なサービスである。

◆狙いは「駅の効率化」と「商圏の囲い込み」

今のところモバイルSuicaのハードルは高いが、その理由の大半は「サービス開始初期の混乱を避けるため」だろう。それでも2週間未満で2万人突破という状況を鑑みれば、JR東日本がハードルを低くすることで、かなり早いペースでの普及が予測できる。

JR東日本には、モバイルSuicaを普及させることで得られるメリットが、大きくふたつある。

ひとつは「駅施設の効率化」だ。モバイルSuicaでは、携帯電話の通信機能を使い、オンラインで乗車券/電子マネー兼用の利用分がチャージができる。さらに定期券の購入やグリーン券購入機能も用意されており、すべての機能が携帯電話上で完結する。つまり、モバイルSuicaが普及すれば、券売機や駅窓口の必要性が大幅に減るのだ。都市部の駅では空いたスペースにテナントを迎えれば新たな収益源になり、郊外駅では設備やスペースの維持費を削減できる。駅施設の効率化は鉄道会社にとって大きなメリットがある。

そして、もうひとつの理由が駅を軸にした「商圏の囲い込み」だ。Suica電子マネーに目を向ければ、既に駅ナカ・駅ウエへの展開は完了しており、現在は駅周辺のコンビニやコインパーキングなどに勢力を伸ばしている。モバイルSuicaは電子マネーのチャージや残額確認が容易なため、このように駅以外に電子マネーの利用を広げる上で有利だ。またソフトウェアのアップデートが可能なモバイルSuicaならば、将来的に駅周辺を大きく囲い込むCRMを用意することもできる。

これらの理由から、同社が今年夏以降から普及促進の拍車をかけてくる可能性は高いだろう。

◆交通分野が主戦場になる

公共交通事業者のおサイフケータイ対応の背景には、決済ビジネスの陣取り合戦がある。鉄道と駅という交通から、新たな決済ビジネスのキャスティングボートを握ろうとしているのだ。

一方、自動車を取り巻く環境にも「ロードサイド」の決済市場がある。こちらはETC/DSRCがキャッシュレス時代のインフラとして本命視されているが、公共交通分野で急伸するおサイフケータイ系の勢力も視野に入れておいた方がいいだろう。

《神尾寿》

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