非公開の事前審理…公判前整理手続きとは

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今年5月に山形県米沢市内で発生した交通事故について、山形地裁米沢支部は19日、全国で初めて公判前整理手続きを経た公判を行った。

問題の事故は5月19日に発生している。被告となった66歳の女は米沢市内の市道で乗用車を運転中、青信号に従って右折しようとしたところ、横断歩道を進行していた自転車の女性に衝突。右足などを骨折する全治3カ月の重傷を負わせ、業務上過失傷害の罪に問われた。

女は当初、起訴事実を全面的に認めていたが、途中からこれを覆して「被害を受けたと主張する女性の単独転倒が原因で、自分は事故とは関係ない」と主張。否認していた。

論点は「クルマが自転車に当たったのか否か」に絞られるため、検察側と弁護側は今年11月から施行された改正刑事訴訟法によって新設された「公判前整理手続き」によって審理が進められることになった。

この手続きは公判前に検察側と弁護側、裁判所が非公開で集まり、公判での論点を整理して迅速な解決を目指すというもの。双方が極めて初期の段階から公判で立証する事実や、それを裏付ける証拠を提示することになっている。

この事前協議で提出された主張や証拠をもって審理されるため、通常の公判に見られるような新事実の提出は認められない。このため、争点が少なく早期解決が望める一部事件に限っておこなわれるという特徴を持つ。市民が刑事裁判に参加する「裁判員制度」の導入に向け、公判の期間短縮化を狙って導入されたという経緯を持つ。

19日に山形地裁米沢支部で行われた公判では、11月18日に開かれた予備審理の結果を受け、争点が「クルマが自転車に当たったか否か」に集約されたことが明らかにされた。その上で検察側は「自転車の前輪に変形部位が認められ、これは衝突によって生じたものである」と主張。弁護側は「被告は横断歩道の手前で一時停止をしており、この直後に自転車が単独転倒した」と主張し、被告本人と事故処理を担当した警察官を尋問している。

第2回公判は27日に開催され、この回をもって結審する。迅速な解決が望める反面、意見集約のために行われる予備審理は非公開で行われるなど、公開を原則とした現行の制度とは異なる点も多々ある。今はこの制度を用いた事例づくりを進めている段階で、導入後初事例となる本件にも注目が集まっている。

《石田真一》

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