大阪府警は8日、大阪市住之江区内の市道で暴走行為を行ったとして道路交通法違反容疑で逮捕されたJR西日本に勤務する30歳の男が、取り調べに対して「尼崎の脱線衝突事故が原因でストレスが溜まっていた」と供述していたことが明らかになった。
警察では「自己の行為を正当化する理由としては不適切」と不快感を示している。
大阪府警・交通捜査課によると、道交法違反(共同危険行為)容疑で逮捕されながら、責任転嫁とも受け取れる発言を繰り返しているのは、JR西日本で電車の運転士として勤務する30歳の男。
この男と、友人の31歳の男は5月3日の午後11時40分ごろからの約10分間、大阪市住之江区南港南4丁目付近の市道で、故意にリアタイヤを流して走る「ドリフト走行」を繰り返し、周辺の交通を著しく妨害したり、危険を与えた疑いがもたれている。
付近の道路は以前からドリフト走行のテクニックを競い合う「ドリフト族」の出現スポットとして知られており、関西圏から多くのクルマが集まる。
大阪府警では昨年11月の改正道交法施行により、実際の被害が確認されなくとも暴走行為を警官が現認しただけで共同危険行為の適用ができるようになったことから、ドリフト族=違法競争型暴走族に対する大規模な摘発を実施。
当日の暴走の様子をギャラリーに混じった警察官が撮影し、ナンバーから参加したメンバーを特定。今回の2人を後日に摘発している。
逮捕されたメンバーの中に、JR西日本の運転士が含まれていたことも合わせて発覚したが、逮捕された30歳の男は自らの暴走行為に至った理由として「尼崎の電車脱線事故が起きてからずっとストレスが溜まり、それを解消したかった」という理由を真っ先に挙げた。
これ以外にも男は「乗務する際に乗客から“人殺し”と罵られた」、「マスコミのカメラマンが電車の停止位置に陣取り、まるでオーバーランを期待するかのように写真撮影をしていた」などの理由を掲げ、「だからこそ、クルマで走って気分をすっきりさせたかった」などと供述していたという。
だが、男のクルマは尼崎の脱線事故が起きる以前から現場付近で目撃されていたという情報もある。
警察では「事故による過度の緊張やストレスの解消も一因かもしれないが、暴走行為に至った理由を多くの人死傷した脱線事故に押しつけ、ストレス解消という言葉をもって自己の違法行為を正当化するかのような言動はあまりにも不適切かつ不謹慎」と、不快感を露にしている。
大阪府警では違法競争型暴走族の撲滅を目指す「大阪MBL作戦」という取り締まりを進行している。これは山間部の峠道(Mountain)、埠頭・港湾部(Bay)、阪神高速環状線(Loop)から名前を取ったもので、今回の取り締まりもこの一環だった。