京都府警・九条署で保護されたはずの泥酔者が屋外に放置され死亡した事件で、部下に虚偽の報告書を作成させたとして虚偽有印公文書作成、同行使の罪に問われた当時の署長に対する論告求刑公判が25日、京都地裁で開かれた。
検察側は「警察に対する市民の信頼と期待を裏切った」として、懲役1年6カ月を求刑している。
問題の事件は1997年1月16日に発生している。京都市南区内の路上に泥酔状態で倒れていたとして、50歳の男性を京都府警・九条署員が保護した。
男性はパトカー内で眠ったまま午後になっても目を覚まさず、別の署員が異常を感じて119番通報した。男性は近くの病院に収容されたが、午後3時ごろに死亡している。
当時は警察の不手際はないとされてきたが、2002年9月になってから京都府警の監察官室に密告が寄せられた。
この男性がパトカー内ではなく、屋外の駐車場に長時間放置され、それが当時の九条署長の命令によって行われたこと、さらに部下が隠蔽工作に加担させられたことなど、関係者しか知りえない事実が詳細に記されていた。
監察官室ではこれを受け、同年11月に事実関係の調査を開始。退職寸前だった当時の署長を警務課付きにするなど証拠隠滅の防止を図るとともに、元署長を虚偽有印公文書作成・同行使の容疑で昨2月に書類送検。
京都地検も「隠蔽指示は署長の命令であったことは明白で、部下はこれに従わざるをえなかった」として起訴していた。
これまでの公判で元署長は、「虚偽内容が記された報告書に押印された印鑑は部下に預けていたもので、自分は決済した覚えがない」と主張。隠蔽工作に自分は加担しておらず、すべての行動は部下が勝手にやったことと位置づけていた。
25日に京都地裁で開かれた論告求刑公判で、検察側は「署長は副署長に対し、外がまずいのなら、パトカーの中で寝てたことにしたらいい」となどと、具体的な指示を行い、報告書の作成を行わせていたと指摘した。
さらには「普段、自分で使用している印鑑と、部下に預けた印鑑の使用を区別していたとは認められず、署内で一般人が変死したというのに、署長がその解明に関与しないとは通常考えにくい」、「警察署の最高幹部でありながら、すべての責任を部下に押し付け、自己保身と組織防衛を目的に公判で不自然な弁解に終始した態度は見苦しい。警察に対する市民の信頼と期待を裏切った」とまとめ、裁判所に対して懲役1年6カ月の実刑判決を求めた。