誰も困らないはずだった…兵庫県警で大規模な書類偽造

自動車 社会 社会

兵庫県警は6月30日、自動車警ら隊(通称:自ら隊)の隊員が、検挙実績をアップする目的で架空の被害者をでっち上げ、書類も捏造する形で検察庁や家庭裁判所に送致していたことを明らかにした。

同日までに行われた内部調査によって判明したもので、関与したのは少なくとも10人以上とみられている。

これは兵庫県警・監察官室が明らかにしたもの。発端となったのは昨年12月、西宮署が担当した自転車盗難事件で、被害者に関する情報の記載がなされていないなど、不備のある書類が発見された。

この書類は自ら隊が担当したもので、さらに調べを進めたところ、被害者が実在しないケースがいくつかあることがわかった。内容に不審な点のある書類は約300件発見され、いずれも自ら隊が検挙したことになっている軽微な事件のものばかりだった。

その後の調べで、これらの事件の大部分が捏造と判明。自ら隊の隊員が数字上の検挙実績を上げるため、通常なら窃盗事件にはなりえないものについても、被害者を捏造することで事件化していたことがわかった。

通常、自転車盗難など軽微な窃盗案件で、しかも容疑者が初犯などの場合、容疑者が成人であれば「微罪処分手続書」と呼ばれる書類が、また、少年であれば「簡易送致書」というものが作成され、これらが検察庁や家裁に送られることになる。

ただし、被害が軽微であったり、再犯の恐れが無い場合などでは、犯罪を起こしたという記録はなされるものの、容疑者は不起訴であったり、審判不開始の処分となることが多い。

送検や送致された事実が容疑者本人はもちろん、被害者に告げられることもないので、本来は占有離脱物横領の扱いとなる事件についても、架空の被害者を作り出すことによって窃盗事件として扱うことができるようになる。

また、占有離脱物横領事件であれば検挙率にカウントされないが、窃盗事件とすることで検挙率にカウントされることになるため、自ら隊の隊員はこうした制度を悪用し、自らの実績を上げるために積極的に不正を行っていたとみられる。

今回は被害者の記載に不備があったため、これを本人に問い合わせようとしたことから明るみになったようだ。

このような不正が始まったのは昨年が最初ではなく、伝統的に行われていた可能性が高いとみられる。関わったのは自ら隊に属している、もしくは所属していた経験のある隊員で、少なくとも10人、多ければ100人近くになる可能性が高い。

中には検挙率が高いとして表彰を受けている隊員もいるが、監察官室ではこれらの案件についてもすべて調査しなおすとしている。

《石田真一》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース