証拠は別人…DNAが警察の主張を否定

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神奈川県横浜市内で1997年7月に衝突事故を起こした男性が「酔って寝ているだけ」と、警察官に放置された結果、死亡したという事件について、横浜地検は3日、男性の遺体の一部とされてきた臓器片が別人のものだったことを明らかにした。

監察医はこの男性の死亡原因を「司法解剖の結果、心筋梗塞」としてきたが、その最大の証拠が別人のものと判明したことで、「放置したわけではない」とする警察の主張が根底から覆される可能性が高くなった。

問題の事故は1997年7月19日未明に発生している。横浜市保土ヶ谷区内の市道交差点で、当時54歳の男性が運転するRV車が電柱に激突する事故を起こした。男性は激突した際に胸を強打。そのまま意識を失って運転席で倒れた。

近隣住民の通報を受けて駆けつけた神奈川県警・保土ヶ谷署員は、このクルマに衝突した際の痕跡があるにも関わらず、男性が署員の呼びかけに応じないことから「酔って寝ているだけ」と判断。

クルマを他車の通行の支障にならない路肩に移動し、男性をそのまま車内に置いたまま現場を離れた。男性は数時間後、最初に通報したのとは異なる住民の要請で駆けつけた救急隊員によって病院に収容されたが、約10時間後に死亡した。

変死の扱いとなるため、神奈川県警の監察医として指定された医師が司法解剖を行ったとされ、この結果として「心筋梗塞」の可能性が示された。

しかし、遺体には解剖の傷跡が存在せず、死因についても「警察官の現場放置を正当化する根拠のないものだった」と遺族側は主張。2000年7月に監察医や県などを相手に損害賠償訴訟(民事)を提訴。2002年4月には監察医を刑事告訴していた。

民事、刑事を通して監察医は「心筋梗塞は間違いない」として、司法解剖の際に男性から採取したという臓器片を証拠として提出した。しかし過去の裁判では「DNAを死亡した男性の実子のものと比較した結果、全く類似性が見られないことから、証拠として提出された臓器片が死亡した男性のものとは言えない」という、別の医師による鑑定結果が上げられていた。

地検では昨年秋にこの臓器片を押収。別の医師の手によって再鑑定が進められてきたが、その結果として驚くべき事実が判明した。

監察医が証拠提出した臓器片は死亡した男性のものではなく、女性のもので、しかも血液型がまったく違うものだった。つまり「これを証拠として、男性の死因を確定することはできない」と結論付けられた。

検察では監察医から事情を聞き、証拠提出された臓器片をどのようにして入手したのか、どうしてこれを男性から採取した臓器片と偽ったのかなどについて、厳しく調べを進めていくとしている。

今回、別人の臓器だったことが判明したことにより、警察が民事、刑事で主張した内容の信憑性は揺らぐこととなり、今後の展開が注目される。

《石田真一》

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