ハンドルを握っていたと思うと恐ろしい---裁判長が苦言

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泥酔状態でクルマを走らせているところをパトカーに発見され、追跡から逃れようとした際に赤信号を無視して交差点に進入。親子5人が乗ったクルマと出会い頭に衝突し、9歳の男児を死亡させたことで危険運転致死傷罪に問われた20歳の男に対する初公判が20日、さいたま地裁で開かれた。

被告は容疑を全面的に認めたが、そんな被告に対して裁判長が「社会人として落第」と苦言を呈す場面も見られた。

この事故は昨年11月23日の未明に発生している。同日の午前5時20分ごろ、久喜市内の市道をパトロールしていたパトカーが、ふらふらとした挙動で走る不審な乗用車を発見。ただちに停止を求めた。

だが、乗用車はこれを無視するようにスピードを上げて逃走を開始。しかし、安定した挙動は維持できず、ガードレールやブロック塀に数度の衝突を繰り返すなど、かなり危険な状態だった。

クルマはそのまま逃走を続け、発見から5分後の午前5時25分ごろ、久喜市南4丁目付近の県道交差点へ赤信号を無視して強引に進入。青信号に従って走行していた44歳男性の運転する乗用車と出会い頭に衝突した。

この事故で後部座席にいた9歳の男児が車外に放出。全身を強く打って間もなく死亡した。

事故の原因となった20歳の男は業務上過失傷害の現行犯で逮捕されたが、後の調べでこの男が違反累積で免許取り消しになっていたことが判明。さらには事故直前までに大量のアルコールを摂取し、泥酔状態だったこともわかった。

このため、警察では容疑を危険運転致死傷罪に切り替えて送検していた。

20日の初公判で検察側は、被告の男が免許取り消し以後も日常的に無免許運転を繰り返していた事実を明らかにしたほか、同乗していた交際中の女性が「危ないから止まって」と訴えたにも関わらず、それを無視するように加速していたことも示した。

これに対して被告は起訴事実を全面的に認めた上で「捕まれば(執行猶予が無効となり)懲役刑になってしまうので、逃げることしか頭に無かった。飲酒運転や無免許運転も事故を起こさなければいいと軽視していた」などと述べた。

被告が「後先の考えない無謀な運転で取り返しのつかないことをしてしまいました」など、淡々と反省の言葉を述べる中、裁判長が突然「君は社会人として落第ですよ。君のような人がハンドルを握っていると考えるだけでも恐ろしい」という苦言を呈す、そんな珍しい場面もあった。

《石田真一》

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