頭の中にあったシナリオを優先? 供述調書に加筆した警部補

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警視庁は20日、福生(ふっさ)署の交通課に勤務する55歳の警部補が、2001年3月に発生した交通事故の供述調書に加筆し、業務上過失傷害の罪に問われた37歳男性の公判を混乱させたことなどを理由に、停職1カ月の懲戒処分を実施した。

警視庁の調べによると、供述調書に加筆したとして懲戒処分の対象となったのは、福生署の交通課に所属する55歳の警部補。この警部補は2001年3月17日、東京都あきる野市内で発生した乗用車と自転車の衝突事故の捜査を担当した。

この事故で自転車に乗っていた男性は鎖骨骨折などの重傷を負い、事故後すぐに事情聴取ができる状態では無かったことから、当時34歳だった乗用車を運転していた男性から事情を聞いた。

男性はこの際、「事故の瞬間は信号を見ていなかったが、たぶん青だったと思う。信号無視はしていない」と供述した。

しかし、警部補はこの内容を供述調書には反映させておらず、後日に被害者の事情聴取を行った際に「信号は青だった」と聞かされ、そのときになって初めて加害者側の供述調書に事故当時の信号の色について聞いた内容が反映されていないことに気づいた。

警部補は上司に相談したが、上司は「信号無視ということで送検した方が良いのではないか」とアドバイスしたという。これに従い、警部補は「事故当時は信号をよく見ていなかった」と加害者の供述調書に加筆。クルマを運転していた男性側が信号無視をしたことが事故原因につながった、として送検した。

検察側もこの供述調書を証拠として採用したが、加害者側は当初から一貫して「信号無視はしていない」と主張した。

2002年4月には警部補自身も法廷に立ち、供述調書の内容に間違いがないと証言したが、加害者側の弁護士は「他の状況証拠から考えても供述調書の内容は不自然であり、捏造された可能性が高い」と警視庁に告発。警視庁はこれを受けて内部での捜査を実施したが、その結果として加筆の事実が明らかになった。

これを受けて検察側も供述調書を証拠から取り下げる措置を取り、裁判所は「証拠が不十分であること」、「他の状況証拠などから被害者側が信号無視を行った可能性が高いこと」などを理由に、男性に対して無罪を言い渡している。

警視庁では「当初からきちんとした捜査を実施していれば、公判を混乱させることも無かった」と不手際があったことを認めており、加害者側からの事情聴取に怠りがあったことで、被害者側の供述が結果として重要視されてしまったことも認めている。

問題の警部補は処分の決定を待って辞職する方針を示していたが、今のところ辞表は受理されていないという。
《石田真一》

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