事故きっかけとなったトラックに尋常でない細工……50人死傷の多重衝突

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今年7月、兵庫県淡路町内の神戸淡路鳴門自動車道の下り線で、エンジントラブルを起こした大型トラックから噴出された白煙で視界を奪われた後続車が多重衝突事故を起こし、約50人が死傷した事故で、国土交通省・四国運輸局は23日、事故の原因がスピードリミッターの解除にあったことを明らかにした。白煙を吹き上げたトラックを製造したメーカーの調査報告書によるもので、解除は人為的に行われているという。

この事故は今年7月11日夜、神戸淡路鳴門自動車道の下り線を走行していたトラックが白煙を突然吹き上げ、その煙によって視界を失った後続車9台が次々に衝突するという事故となり、約50人が死傷したというもの。

白煙を吹き上げたトラックのターボチャージャーはタービンの羽根が全て破損しており、さらにはエンジンオイルのほぼ全量が無くなっていることが後の調査でわかった。しかし、同様の故障例がこれまでに1件も発生しておらず、エンジンオイルとターボ破損の因果関係も考えられないため、四国運輸局の依頼を受けた製造メーカーが車体を回収し、詳細な調査を行ってきた。

その結果、エンジンに送り込む燃料の量を調節し、最高速度を抑制する「フルスピードストッパー」と呼ばれる部品が故意に緩められ、通常よりも多くの燃料がエンジンに流れ込むように調整されていた。ストッパーは調整ができないよう、プラスチックカバーで封印されているが、事故を起こしたトラックはこれがむき出しの状態になっていたという。

事故車と同じ調整を行った他のエンジンで実験を行ったところ、エンジンの回転数自体が15%程度上がり、レッドゾーンに突入しても燃料が遮断されないという現象が確認された。これが原因でターボチャージャーに負担がかかり、金属疲労で生じた微細な亀裂が一気に拡大し、破損に至ったと分析している。

この事故では「道路構造を熟知していながら、煙が滞留しやすい場所にトラックを停止させたことは事故の回避責任を果たしたとは言えない」という判断から、問題のトラックを運転していたドライバーを業務上過失致死傷容疑で書類送検する方針を兵庫県警が固めていると言われており、今回の細工発覚でさらに窮地に追い込まれそうだ。

《石田真一》

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