高性能や高機能ではなく、あくまでものんびりと、ゆったりとした「がんばりすぎない、ユルい気持ちよさ」という精神性を開発コンセプトにしたという『アルト・ラパン』。そういう特異なコンセプトを実現するにあたって、開発陣はどんなクルマを参考にしたのだろうか?
「参考にしたのは、クルマではなくて、いろいろなモノやことですね」とデザイングループ・第二デザイングループ長の片岡祐司さんは答える。
「具体的にはデザインの優れた家具とか、雑貨とか、家電とか。いま若い世代のセンスのいい人たちに人気があるものなんかです。このソファはなぜすわり心地がいいのか、とか…。家電なんかも、単にレトロという段階ではなく、いまデザインの傾向が大きく変わりつつありますしね。そういう感性をクルマにも反映させようと考えたわけです」
とはいっても、『ラパン』のデザインにおいては、よくインテリア雑誌のグラビアに載っているおシャレな部屋のように、スミからスミまで一分の隙もなくカッコよくキメすぎないように、と気をつけたというからおもしろい。
「デザインをスミからスミまでキメすぎちゃうと、中にいるひとは疲れちゃうじゃないですか。このクルマのテーマはあくまで、がんばりすぎない、のんびり、ですから、同じ素敵なデザインでも、なごめることを第一に心がけたんです」
この「キメすぎると疲れちゃう」という感覚、まさに現実主義者のスズキならではのユニークなものとはいえまいか。