アストンマーチン『バンキッシュ』は、1998年の『プロジェクト・バンテージ』がオリジナルだが、これはスタイリング提案で、プロトタイプ制作技術は1台限りだった。バンキッシュとして量産化するにあたっては、様々なハイテクが注ぎ込まれている。
ストラクチャー関係だけをあげてみても……
●カーボンファイバー・ドアリング---これはプロトタイプでも採用されていた。
●アルミ部品接着組み立てシャシー---ハイドロ・オートモティブ社製のアルミ部品をエポキシ系接着剤で接合、摂氏180度に加熱して固着する。
●センタートンネル---アルミ部品の上にカーボンファイバー張り合わせ。軽量化に貢献。同程度の剛性を確保するためにはアルミ部品の厚さは20mmになる。またカーボンファイバーとエポキシ樹脂との組み合わせは、プロペラシャフトからの騒音、排気管からの熱を室内に入らないよう遮る。
●FAPP---フォード・オートメイテッド・プリフォーム・プロセス。パネルの素材となるグラスファイバー・シートのファイバーを、パーツの形に長さを合わせて射出し、また必要な強度に合わせてシートの厚さや密度も変えることができるシステム。大きなシートから切り張りするのと比べて素材の節約になる。設計図がデータ化されて工作機械を数値制御できるようになって可能になった工法。
●スーパーフォーム---空気プレスともいうべき工法。アルミシートを摂氏500度に熱し、やはり480度に熱した金型に乗せ、反対側から1034kPa(キロパスカル)、地上大気圧の約1000倍の空気圧をかける。製作にコストのかかる金型が片側だけで済み、生産台数の少ないクルマに適している。