車高を手軽に下げたいとき、有力な選択肢となるのがダウンサスだ。純正ダンパーを生かして車高を下げられる一方、乗り心地やアライメントには注意したい。メリットとデメリット、装着時のポイントを解説する。
◆ダウンサスとは 純正ダンパーを生かして車高を下げるローダウンパーツ
ダウンサスとはサスペンション一式を交換するのではなく、純正ダンパーを生かしたままスプリングを交換して車高を下げるためのパーツだ。一般的には純正スプリングよりも車高が下がるよう設計されていて、純正サスペンションを分解してスプリングを入れ替えることでローダウンする。
車高が下がるとサスペンションの縮み側ストロークが少なくなるため、それに対応して純正よりバネレートを高めている製品も多い。製品によって特性は異なるが、純正より10~30%程度バネレートを高めることで限られたストロークの中でも車重を支えやすくしているタイプが見られる。
◆ダウンサスのメリットは価格と見た目 ハンドリングの変化も期待できる
多くのダウンサスでは車高を数cm下げることができ、タイヤとフェンダーの隙間が小さくなることでドレスアップ効果を得やすい。車高調などと比べてパーツ価格を抑えやすく、純正ダンパーをそのまま使用できることも大きなメリットだ。
走行面では車高が下がることで重心も低くなり、さらにバネレートが高くなることで加減速時のピッチングやコーナリング時のロールを抑えやすくなる。純正サスペンションの乗り味を大きく変えずに、見た目と走行性能の両方を改善したいユーザーにとって取り入れやすいローダウン方法と言える。
一方でダウンサスには車高調のような車高調整機能は基本的にない。装着後に「もう少し下げたい」「少し高く戻したい」と思っても簡単には調整できないため、購入前にメーカー公表のダウン量や装着イメージを確認しておくことが重要だ。
◆ダウンサスのデメリットはストローク不足 バンプタッチと乗り心地に注意
車高を下げるとサスペンションの縮み側ストロークも短くなる。そのためスプリングとダンパーのバランスが適切でない場合、サスペンションが大きく縮んだ際にバンプラバーへ当たる「バンプタッチ」が起きやすくなる。これが頻繁に起こると突き上げ感が強まり、乗り心地の悪化につながることがある。
ひと昔前には、とにかく車高を下げることを優先した結果、乗り心地が大きく悪化するダウンサスも存在した。しかし現在はストローク量を確保するために短い専用バンプラバーを付属したり、バンプタッチしにくいスプリング設計を採用したりする製品も増えている。
そのため価格やダウン量だけでダウンサスを選ぶのではなく、使用する純正ダンパーとのマッチングやストローク量、メーカーの開発方針なども確認して選びたい。
GR86などスポーツカーでもダウンサスが選ばれる理由
現在では単に車高を下げるだけではなく、走行性能まで考えて開発されたダウンサスも登場している。GR86用にはプロドライバーの佐々木雅弘氏がプロデュースした製品も存在し、筑波サーキットでの走行テストなどを通じてスポーツ走行を想定した開発が行われている。
こうしたダウンサスが成立する背景には、純正ダンパーそのものの性能向上もある。純正サスペンションを生かしながらスプリング特性を変更することで、ストリートでの扱いやすさを残しつつスポーツ性を高めるという考え方だ。
ただしサーキット走行を前提にするなら、すべてのダウンサスが適しているわけではない。タイヤやブレーキ、アライメント、ダンパーとの組み合わせまで含めて考える必要がある。
電子制御ダンパー搭載車でも純正機能を生かしやすい
近年ダウンサスが再び注目されている理由のひとつが、電子制御式ダンパーを採用する車種の増加だ。走行モードに応じて減衰力を変化させる純正サスペンションは、快適性とスポーツ性能を両立できるのが魅力だ。
こうした車種でサスペンション一式を社外品へ交換すると、純正の電子制御機能が使えなくなったり、車種や製品によってはエラー対策としてキャンセラーなどが必要になったりする場合がある。
そこで純正ダンパーと電子制御機能を残したまま車高を下げられるダウンサスが選択肢になる。輸入車だけでなく国産スポーツモデルでも電子制御ダンパーを搭載する車種が増えており、純正機能を生かしたローダウンという点でもダウンサスにはメリットがある。
ダウンサス交換のDIYは危険 スプリングコンプレッサーが必要
ダウンサスの取り付けは見た目以上にハードルが高い。純正サスペンションではスプリングを縮めた状態で組み付けているケースが多く、分解時にはスプリングコンプレッサーなどの専用工具を使って安全にスプリングを縮める必要がある。
作業方法を誤った状態でスプリングの力が一気に解放されれば、アッパーマウントなどの部品が勢いよく飛び出し、顔や身体に直撃して大けがにつながる危険がある。
交換後には各部の締め付け確認も必要になるため、十分な知識や設備がない状態でのDIYはおすすめできない。ダウンサス交換はサスペンション作業に慣れたプロショップへ依頼するのが安全だ。
ダウンサス装着後はアライメント調整が重要
ダウンサス自体は数万円程度から購入でき、車高調などと比較すると比較的リーズナブルに車高を下げられる。しかし取り付け工賃に加えて、装着後のホイールアライメント調整まで予算に含めて考えておきたい。
車高が変わればサスペンションアームの角度も変化し、キャンバーやトーなどのアライメントも変わる。それを放置するとタイヤの片減りや直進安定性の低下、ハンドリングの違和感につながる可能性がある。
また車高を下げ過ぎれば最低地上高など保安基準への適合にも注意が必要だ。ダウンサスを装着する際は車高の下がり幅だけを見るのではなく、乗り心地やストローク量、アライメント、保安基準まで含めて考えることが大切。適切な製品選びと取り付けを行えば、純正サスペンションの良さを生かしながら見た目と走りをバランス良く変えられるのがダウンサスの魅力だ。




