大手自動車部品メーカー「アイシン」はパシフィコ横浜(横浜市西区)で開催された「人とくるまのテクノロジー展2026」に出展。「ユーザーに寄り添う走り・乗り心地」と「安全・安心、快適な移動体験」をテーマに、 “移動”の価値を高める製品・技術を紹介した。

◆ドアは触らず開ける時代へ…カメラがドライバーの意図を読み取る
ブースで来場者の関心を集めていたのが、ピラー内蔵カメラを活用した自動ドアシステムだ。従来のハンズフリーオープン機能は足の動きやボタン操作が必要だったが、このシステムでは利用者の視線や肩の向き、身体の動きを認識し、「ドアを開けたい」という意図を推定して自動開閉を行う。
展示デモでは既に普及が進むデジタルキーによるオーナー認証を組み合わせていたが、これは既存車両への改造を最小限に抑えながら導入できることが理由。将来的には顔認証などを活用した本人確認機能の導入も検討しているとのことだが、自動車では認識の環境が一定でないことからその精度向上は大きな課題。また、プライバシーへの配慮も避けては通れないとした。
そこでまずは既存車両への改修を最小限に抑えながら導入できる構成を目指し、量産化への道筋をつけていく計画ということだった。
◆ハイブリッドはまだ進化する…2速ドッグクラッチで燃費を約20%改善

電動化技術では、新開発のシリーズ・パラレル式ハイブリッドシステムが披露された。
最大の特徴は、2速ギアとドッグクラッチを組み合わせた独自構造だ。従来の油圧クラッチを廃止することで油圧損失を低減し、エンジンとモーターの効率を高めている。
説明によれば、従来システムと比較してモード燃費は約20%向上。特に低速域や登坂路など高負荷条件での効果が大きいという。また、約80kWのモーターとエンジントルクを協調させることで力強い加速性能も確保しており、「燃費か走りか」という従来のトレードオフを小さくしようとする狙いが見える。
BEVシフトが進む一方で、グローバル市場では依然としてハイブリッド需要が高い。アイシンの展示は、ハイブリッド技術にもまだ大きな進化余地があることを示していた。
◆聴覚障害者支援から生まれた音声認識技術…「WaiWai System」が目指す車内コミュニケーション

一見すると自動車技術とはかけ離れた展示に見えたが、リアルタイム音声認識アプリ「WaiWai System」も興味深い内容だった。
このシステムは、社内に在籍する約300人の聴覚障害者社員の課題解決から生まれた技術だという。騒音環境下でも高精度な文字起こしを実現し、多言語が混在する会話にも対応。会議内容の要約や決定事項の抽出まで行えるという。
さらに企業独自の専門用語辞書を登録できるほか、ChatGPTと連携することで自然言語による修正や対話も可能となっている。
そうした中で注目すべきはオフライン対応での利用も可能になっている点だ。クラウド接続が利用できない環境でも音声認識機能を維持できるため、トンネル内や山間部、災害時など通信環境が不安定な状況でも利用可能となる。担当者によれば、将来的には車載音声エージェント技術への展開も見据えていると話していた。
◆後輪も積極的に操る…アイシン独自のアクティブリアステアリング

シャシー技術ではアクティブリアステアリング(4WS)を展示していた。これは既にトヨタ『クラウン』やレクサス『RX』などへの採用実績を持つ量産技術であり、同軸減速機構と出力軸一体構造によるコンパクト設計が特徴となる。
本来、リアステアリング技術は取り付けスペースの確保が課題となるケースが多いが、同社のシステムは高い搭載性を実現していることを最大のウリとする。SDV時代において車両運動制御の重要性はさらに高まると考えられており、今後は統合制御技術との連携によって新たな価値を生み出していきそうだ。









