経年劣化でトラブルが発生しやすいパーツの一つにバッテリーがある。過放電になるとセルが動かずエンジンの始動ができなくなる。そこでバッテリーが上がった際の対応策を覚えておこう。
◆バッテリーの役割と「上がり」の仕組み(バッテリー上がりの原因と予防)
クルマの車内の照明やオーディオ、灯火類、セルモーターなど電装系全般への電源供給を一手に引き受けているのがバッテリーだ。エンジンルームなどに設置されている小さなバッテリーひとつでクルマのさまざまな電力をまかなっている重要なパーツに注目した。バッテリーはクルマの中でも比較的経年劣化が起こりやすく交換サイクルが早いパーツのひとつだ。
しかも電気がないとクルマは動かなくなってしまうのでメンテナンスが非常に大切。劣化を放置していると、ドライブ先でバッテリーが上がってしまってエンジン始動ができなくなることもある。実際にJAFの出動回数では常に上位を占めているのがバッテリーの過放電(バッテリー上がり)であることを考えると、トラブルの可能性が高い重要ポイントであることがわかるだろう。
バッテリーはクルマのオルタネーターから供給された電気を充電して、各部に電気を供給するというサイクルを常に繰り返している。しかし何らかのトラブルが発生すると充電能力が低下して最終的には電力を供給できなくなる。これがバッテリー上がりだ。
バッテリーを上げてしまう要因のひとつがドライバーのミス。例えば駐車中の灯火類をつけっぱなしにしてエンジンを停止して長時間放置した場合などが挙げられる。一方でもうひとつのバッテリー上がりの原因がバッテリーの劣化だ。こちらは経年劣化でバッテリーが徐々に弱っていく現象。最初に劣化を感じるのはセルモーターの回転だろう。エンジン始動時にセルを回すと勢いよくキュルキュルとセルモーターが回る音が聞こえるが、バッテリーが弱るとセルの回転が弱まっていく。これはバッテリー劣化のサインと捉えると良いだろう。
◆DIYでの応急対処:ポータブルバッテリー(ジャンプスターター)
いずれにしてもバッテリーが上がってしまうとエンジン始動ができなくなってしまう(セルモーターが回転しない)のが最大の問題。これがドライブ先で起こってしまうと先にも紹介した通りロードサービスのやっかいになることになる。しかし、救援を待つ時間やその後の移動などを考えるとドライブの予定は大幅に狂うことになる。そこでスピーディに自己解決できるのに越したことはない。そのためにはバッテリー上がりにDIYで対処する方法を備えておくことが大切だ。
多くの場合はバッテリーの能力が下がり、大電力が必要なセルモーターが回らないのがエンジン始動を困難にしている原因。そのためいったんエンジンが始動できれば走行可能になるケースがほとんどだ。クルマが動きさえすればカー用品店などに移動してバッテリーを交換することも可能になるだろう。
そこでエンジン始動にも対応するポータブルバッテリーを車内に用意しておくと良いだろう。ポータブルバッテリーの電力を使って一時的にセルモーターを回す電気を供給するのが狙い。スマホ充電などのモバイルバッテリーとしても利用できるタイプもあるので汎用性が高い。
さまざまな容量のポータブルバッテリーがあるが、選ぶ際にはCCA値を基準にすると良いだろう(一般的な普通乗用車は300~600A程度)。愛車のセルモーターを動かすことができる容量のポータブルバッテリーを用意すればバッテリー上がりのトラブルが起きても慌てず対処できるだろう。
またもうひとつの選択のポイントはバッテリーに接続してエンジン始動(ジャンプスタート)を実施できる回数。その指標となるのは容量(mAh:ミリアンペアアワー)だ。例えば6000mAhとは6000mAの電流を1時間流し続けることができる容量を指す。この数字が大きいと電気を流し続けることができる時間も長くなる。1回のジャンプスタートで掛からないときに、2度目の始動を試みるケースを想定するならば少しでも容量の大きいポータブルバッテリーを用意しておく必要がある。
◆ブースターケーブルの基礎知識(選び方とつなぎ方の注意点)
一方、もうひとつの対処策がブースターケーブル(プラス(赤)、マイナス(黒)のケーブルがあり、両端にワニ口のクリップが付いている構造)の用意だ。
こちらは正常に動いている救援用の車両が必要になる。バッテリーが上がってしまった愛車のバッテリーと救援車両のバッテリーをブースターケーブルで接続することで、救援車両のバッテリー電力を使って愛車のエンジンをかけることができるという、バッテリー上がりのレスキュー方法だ。
緊急用に洗車道具などと合わせてトランクの片隅に積み込んでおけば、バッテリー上がりの際の手軽なトラブル回避になるだろう。ちなみにブースターケーブルは電線の太さによって供給できる電力に違いがあるので、愛車に合わせたケーブルを選ぶ必要がある(一般的な乗用車の場合は電流値は80~100A程度)。余裕を持って太めのケーブルを選んでおけば汎用性も高まる。
秋の行楽シーズン、出先でエンジン始動ができなくなって立ち往生することがないようにバッテリー上がりのトラブル対策をあらかじめ用意しておくことでドライブの安心感を高めておこう。トラブルが発生した際もスマートな対応で快適なドライブを継続できる環境を作っておこう。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請け負い。現在もカーオーディオをはじめとしたライティングを中心に活動中。



