改革に近道なし、だからこそ必要な部品メーカーのイノベーションと付加価値創出のポイント[インタビュー]

改革に近道なし、だからこそ必要な部品メーカーのイノベーションと付加価値創出のポイント[インタビュー]
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  • 自動車部品メーカーの新規事業戦略とR&D改革~その実態と15の改革実践ポイント~セミナー資料
  • 自動車部品メーカーの新規事業戦略とR&D改革~その実態と15の改革実践ポイント~セミナー資料
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自動車部品メーカーは、CASE改革の大波によって岐路に立たされている。イノベーションによる改革、新規事業開拓、新しい付加価値の創出などに企業として向き合わなければならない。わかってはいるが、予算や人材、人手不足など現実的な障害により思うように進まないというのが本音かもしれない。

10月21日に開催予定のレスポンスセミナーは「自動車部品メーカーの新規事業戦略とR&D改革~その実態と15の改革実践ポイント~」と題して、事業改革やポートフォリオの変革にサプライヤーはどう取り組めばいいのかを解説する。講師はPwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー 渡辺智宏氏。

どんなセミナーになるのか話を聞いた。

サプライヤーの実態調査から見えたR&D改革のポイント

――まず、講演ではどのようなことを話すのか概要を教えていただけますか?

渡辺氏(以下同):今回の講演のベースは、日経BPと共同で行っている新規事業実態調査の分析結果と、開発マネジメント実態調査の分析結果を踏まえたものになります。新規事業実態調査は5年ごとに行い2016年と21年の調査結果を比較し、新規事業における成功のポイントを5つまとめています。開発マネジメント実態調査は3年ごとに実施しているもので、2019年、22年、25年の調査結果を比較しています。開発マネジメントでは、それを高めるための15のテーマを定めました。

最終的に、部品メーカーが組織改革や事業改革活動を成功させるうえでのポイントを7か条としてまとめています。

――非常に野心的ですね。講演のタイトルには「R&D改革」とありますが、組織の変革に技術開発や商品開発は欠かせないということでしょうか。

製造業において技術は欠かせないものだという点でそのとおりだと考えています。製造業の自社資源には、販路、顧客、人材、生産設備、パートナーなどさまざまですが、今回のベースとなった新規事業実態調査で、調査対象の各社がもっとも重視しているのは技術力です。エンジニアリングチェーンを機能させる経営には、既存事業の持続的改善、価値の最大化と、新規事業を生み出し、次の成長の柱とする力の2つが重要です。この2つをグリップさせるのがR&D(研究・開発・設計・生産技術)なのです。

事業開発とマネジメントに重要なポイント

――新規事業開発や開発マネジメントの両立がポイントですね。具体的にはどんなポイントがありますか?

調査結果の詳細はセミナーで詳しく掘り下げますが、その分析で得られたのが次の5つの取り組むべき視点です。

1. コミットメント:経営トップの主導
2. 戦略:全社戦略の高度化
3. 探索:強み・市場の魅力・顧客ニーズによる領域探索
4. 文化:失敗を許すカルチャー醸成
5. システム:マネジメント基盤の整備

――既存事業の持続的改善・価値の最大化についてはどうでしょうか。

これは開発マネジメント実態調査の分析から見えてきたことです。3年ごとの3回の調査対象期間(2014年から2025年)は、COVID-19もありまさに激動の12年といえるものでした。たとえば、既存事業でも要件検討が十分でなかったり設計完成度が低いといった問題は、量産開始後(SOP)でも手戻りを発生させかねません。本業や開発リソースが削られ、スケジュールやコスト、品質に対する負のスパイラル。忙しくて改善そのものに着手できない。

こういった問題に対して、我々は業績とQCD(品質・コスト・納期)水準と開発マネジメント水準の関係性を解き明かし、業績をあげるために有効なマネジメントの取り組みを研究してきました。その中で、開発マネジメント水準が高い企業はQCD問題が少なく、業績も良いという結果の関係性を明確化できました。

先ほどの新規事業を成功させる5つのポイントも、この開発マネジメントの15テーマも、いってしまえば当たり前のことです。たとえば15のテーマには、未来への洞察、戦略の具体化、組織構造の最適化などがあります。新しさはないですが、どれも組織運営やマネジメントにおける普遍的な要素だと思います。我々の調査は、その正論をデータであらためて裏付けたものと言えます。

理想論を現実論に当てはめる方策

――なるほど。昔からの組織論やマネジメント論にも根拠はあったということですね。しかし、理屈や理想はわかっていても思い通りにならない製造業の厳しい現実もあります。


《中尾真二》

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