総合商社の双日は6月19日、東京ビッグサイトで開催された「オートサービスショー2025」において、中古車の外装修復痕をドライブスルー形式で判別できる「外装スキャナー」を発表し、その事業概要について説明会を開催した。
中古車流通での車両情報の透明性や信頼性をデジタルで可視化
この外装スキャナーは、双日がPreferred Networks(プリファード・ネットワークス)とと共に開発を進めてきたもので、車両の傷、へこみ、さび、再塗装跡といった外装全体の瑕疵を判別できる能力を持つものだ。2025年秋には中古車オークション大手の株式会社JU岐阜羽島オートオークション(以下、JU岐阜羽島)の車両検査レーンでの実証を開始し、2026年春にはサービスをスタートさせる予定としている。
また、双日はこのシステムに、ボッシュ(Bosch)が開発した車両の事故歴を可視化する評価サービス「Bosch Car History Report」(以下「BCHR」)と併用するプランも合わせて進めていく計画も発表した。この二つの事業を通して、中古車の修復歴や事故歴を客観的データで見える化する新たなデジタル診断ソリューションを提供し、中古車流通の透明性向上を目指していく考えだ。
双日 自動車本部 自動車第一部長 柏木崇伸氏はこのシステムの開発に至った経緯として、「双日が自動車の卸売りおよび小売り事業を中核としてグローバルにビジネスを展開している中で、特に中古車流通分野において、車両情報の透明性や信頼性が不十分であることや、検索員の不足といった解決すべき課題があると認識している。中でも綺麗に修復されると複数の売り買いを経ることで過去の事故歴までがわからなくなってしまうといった懸念を常に抱えていた。そこでこの検査工程のデジタル化を進めようと議論を交わした結果、業界にないのなら双日で開発していこうという流れになった」と説明した。

1台あたりのスキャン時間は約30秒
続いて、外装スキャナーの開発に携わった双日 デジタル推進担当本部デジタル事業開発部長の南波拓年氏がシステムの具体的な説明を行った。
外装スキャナーは、幅5m×高さ3.6m×奥行き1.2mのゲート状のもので、検査員が車両に乗車してドライブスルーのようにこの中を一定速度で通過させると、ゲートに取り付けられたカメラで外装状態を読み取る仕組み。双日によれば、このシステムでは、特に検査員の目視でも難しいとされる、白やシルバー、グレーの車両での再塗装跡の可視化に強みがあり、1台あたりのスキャン時間は約30秒で行われる見込みだという。なお、この技術については現在、特許申請中だそうだ。
説明会場となったオートサービスショー2025の双日ブースには、カメラを取り付けたスキャナー用ゲートのモックアップが設置されていたが、実際のレーンにはこの前に車両の下からボディのアンダー部を撮影するカメラとタイヤの溝を0.1mm単位で計測する機器も用意される。スキャナー部からは特殊な光(光については非公開)を照射して、それを複数のカメラで撮影し、その画像を独自の処理技術によって不具合箇所を判別するという。

ここでポイントとなるのは、この判別が重大な外装の修復歴を見つけるきっかけにもつながるということだ。
これまで中古車オークションに出品された車両は、一旦モータープールに置かれ、検査員が一台ずつ目視で修復痕を判別していた。この作業は時間帯や天候にかかわらず実施されている上にその労力も過大となっており、検査員不足が進む中でその負担はますます大きくなっている。このスキャナーの導入は、いわば流れ作業で検査するだけでその状態をデータとして露わにしてくれるものとなり、導入によって作業の効率化をもたらすだけでなく、検査の公平性という観点でもメリットは大きいというわけだ。
