CES 2025徹底調査、年始の北米メガトレンドと日本の明るい兆し…日本政策投資銀行 青木崇氏[インタビュー]

CES 2025徹底調査、年始の北米メガトレンドと日本の明るい兆し…日本政策投資銀行 青木崇氏[インタビュー]
  • CES 2025徹底調査、年始の北米メガトレンドと日本の明るい兆し…日本政策投資銀行 青木崇氏[インタビュー]

業界関係者の中には、海外モーターショーはパスしても「CES」だけは外せないと思っている人も少なくないだろう。各国モーターショーがローカル色を強めるなか、唯一、日米欧中といった主要な産業国の自動車メーカーがこぞって出展するからだ。

CESは自動車業界に限定したイベントではないが、ソフトウェアシフトやSDVが加速する業界においては、CESで発表される新技術や技術動向を無視することはできない。さらに2025年は、新しいアメリカ大統領の年でもあり、自動車産業への影響や変化を見極める意味でもはずせない存在だ。

とはいえ、このご時世、海外出張はそう簡単に行けるわけではない。膨大な会場で発表をくまなくチェックするのも難しい。CESについて、毎年調査研究を行いレポートや講演をしている青木崇氏(日本政策投資銀行 設備投資研究所 主任研究員)に、CES 2025の見どころだった点とその調査結果について聞いた。

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24年は業界DXとSDVの年

---:今年のCESの報告の前に、去年のCES 2024についての総括をお願いできますか。

青木氏(以下敬称略):CESは、もともと家電・エレクトロニクスショーでしたが、現在はIT、アプリサービス、AI、ヘルスケア、バイオ、エネルギー、オートモーティブ、ロボティクスと非常に広範囲の技術や市場をカバーしています。昨年のCES視察で印象に残ったテーマは、デジタルツイン、ChatGPT、SDVの3つを挙げることができます。

基調講演やセミナー等で頻繁に語られたキーワードは、「カスタマージャーニー」「デジタルツイン」「ソフトウェアデファインド」でした。どれも技術的な革新やブレークスルーが起きたというより、AIによってデジタル技術、インダストリー、サービスなどが新しいフェーズに突入したと考えるべきでしょう。

---:たしかに、デジタルツインは、AIによるシミュレーション技術や生成AIによるエンドツーエンドの技術によって、現実のものになってきた感がありますね。

青木:モビリティ、自動車で象徴的だったのは、ソニーとシーメンスの提携、マグナのV2X強化と共通プラットフォームの提案です。ソニーとシーメンスについては、ソニーのハードウェアにシーメンスのソフトウェアを組み合わせるというものです。マグナは業界の協調領域の重要性を説いていました。Uberはデータ活用によりアマゾンに近い存在になる可能性を感じました。

技術トレンドだけでは読めない自動車市場

---:オープンアーキテクチャや共通プラットフォームは、OEMからも議論があがるようになりました。

青木:ただ、一方でデジタル化やAIに対する反動にも注意する必要があると思っています。技術的なトレンドだけで市場は動いているわけではありません。内燃機関についても、残していく議論が以前より活発になりました。ホンダと日産の経営統合は、日本OEMの再編にもつながる大きな動きです。これも共通プラットフォームの動きを後押しします。

AIによる自動運転やファーミングロボットなどの普及は、必ずしも雇用に結びつくとは限りません。イーロン・マスクが政界入りして政府の無駄を省き、革新技術を推し進めることは、じつはアメリカ経済の再生、MAGAと整合しない可能性があります。

---:確かに、共和党のトランプは、本質的には企業や産業を繁栄させる政策をとり、結果として労働者にもメリットがあるというスタンスですね。

青木:ラストベルトを復活させるとしても、製造業の雇用が増えなければ意味がありません。しかし、アメリカこそ早い段階から製造業は利益率が低いとし、海外調達に切り替えた国です。製造業の復活を図るには日本と手を組むことがMAGAの戦略としてあってもいいと思います。非常に難しいかじ取りだと思います。

2025年のトレンド予想

---:昔に戻せばいいという単純な話ではなさそうですね。2025年のCES視察・調査を踏まえて、今年の動向はどうでしょうか。

青木:視察前は、自動車関係では、GMの動きが気になっていました。Ultium(新EVプラットフォーム)の発表以降、SDVへのコミットメント、Cruise自動運転の戦略変更、ロゴまで変える変革を打ち出しました。ソニー・ホンダモビリティは、アフィーラのアップデート、中国を筆頭とするアジア勢の動きやトヨタのウーブンシティの最新動向にも注目していました。

CES 2025のテクノロジートレンド

---:主催者CTA(Consumer Technology Association)から発表される毎年恒例のテクノロジートレンドは、いかがでしたか。


《中尾真二》

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