東京都の品川区は、ふるさと納税の返礼品として、JR東日本東京総合車両センターでの山手線E235系車両点検ツアーを提供している。オリジナルヘッドマークや車内用車両番号板レプリカなども提供されている。
車両点検ツアーは、大井町駅に隣接するJR東日本東京総合車両センターで、山手線E235系の各種点検や見学ができる2時間30分のツアーだ。車両基地・車両工場で実施するこのツアーの寄附額は10万円。最大4組8人が体験でき、日程は2025年3月1日および3月22日となっている。
オリジナルヘッドマークは、寄附者のデザインを元に制作される。センター内に留置してある山手線E235系に掲出して記念撮影のサービスもある。寄附額は23万5000円だ。車両番号板レプリカの寄附額は7万6000円。
◆ふるさと納税により品川区の財源が失われている
ふるさと納税は、納税とはいうものの正確には寄附(寄付)で、寄附した人の所得税と住民税について控除の対象となる。つまり寄附した人が居住する自治体では税収が減収となり、これが無視できない額になってきている。
品川区によると、ふるさと納税による品川区の住民税減収額は年々増加しており、2024年度は50億円を超え、5年前の約2.2倍にまでなったという。「減収となった税金は、本来品川区民への行政サービスに使われるはずの財源」であり、区では区民サービスの低下につながりかねない問題と認識している。
2023年度決算で品川区の歳入は約2002億円なので、ふるさと納税による減収は約2.5%だ。同じ決算で、区が重点的・緊急的に取り組んだ施策として、住民税非課税世帯等物価高騰対策支援給付金、子育て世帯生活支援特別給付金、ひとり親世帯臨時特別給付金など、「区民生活、区内経済の安定に向けた支援」が約59億円となっている。ふるさと納税寄附金による品川区への流入額は2474万円だった。「現状では、高価な返礼品を受け取った住民が恩恵を受け、税収の減収による行政サービスの低下は住民全体で受け入れなければならない仕組み」(品川区)だ。
品川区を含む特別区は、ふるさと納税制度の見直しを国に求めている。そのいっぽうで、品川区は財源確保の観点、魅力発信の観点から、自らもふるさと納税で地域資源を活用した返礼品を用意し、体験型コンテンツを中心に返礼品を開発している。