名古屋大学は6月20日、将来的にSDV開発に不可欠と見込まれるビークルAPI標準化を目的とする「Open SDV Initiative」を設立し、広く企業の研究参加を促すことを発表した。プレゼンテーションを行ったのは、同大学 未来社会創造機構モビリティ社会研究所 所長で、リアルタイムOSやソフトウェアプラットフォーム、組み込みシステムのサイバーセキュリティや車載ネットワーク、協調型自動運転などを研究分野とする高田広章教授だ。
アプリケーションとビークルOSを橋渡しするビークルAPI
SDVへの期待が高まるにつれ、ソフトウェア開発において様々な課題が生じているという。これまでの開発マインドとしては、容量をギリギリまで見切ったハードウェアを採用してコストを抑えつつ、それに合わせ車種毎に1つのバージョンのソフトウェアを開発するため、工数が増えて手いっぱいといった状況だった。が、SDVにおいては多車種に対して共通のソフトウェアを、徐々に連続的に発展させてはOTAでアップデートを随時行っていくという発想で、そもそもハードウェアに依存せずにソフトウェアを独立して開発することが肝要となる。
とはいえハードウェアや仕様の異なる車両を、同一のソフトウェアで制御することは実際には不可能。そのためソフトウェアはハードウェアごとの違いを吸収するために、ハードウェアに依存しない部分と、逆に依存する部分に分離される。前者は例えば自動運転やプローブ情報取得などの機能を果たすアプリケーションで、後者はビークルOSとしてあらかじめ車両に組み込まれるものになる。この両者の橋渡しとなるもの、アプリケーションがビークルOSの機能を利用するためのインターフェイスが、「ビークルAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)」だ。

より詳しくいえば、アプリケーションは車両によらず同じアプリが動作できるが、ビークルOSは各種センサー/アクチュエーターといった車両デバイスを含む車両ハードウェアの抽象化を司る。いわば車両側の個々のケースと、汎用的なアプリの実行・入力コマンドとを繋ぐのが、ビークルAPIというわけだ。
カギを握るビークルAPIの標準化
だが昨今、新しいコンセプトのEVで存在感を増す中国メーカーに対して、日本の自動車メーカーはソフトウェア開発を含め後手を踏んでいると指摘されている。昨年度から経済産業省と国土交通省が主催し、同じく高田教授が座長を務めるモビリティDX検討会は5月、「モビリティDX戦略」を発表した。そこでは競争が生じていく主要3領域として、①開発設計の抜本的刷新つまり車両のSDV化、②自動運転・MaaS技術を活用した新たなモビリティサービスの提供、そして③データの利活用を通じた新しい価値創出を挙げ、2030~35年に日系自動車メーカーのSDVにおけるグローバルシェア3割を目標としている。そのカギを握るのが、ビークルAPIの標準化であるという。
