xEV市場の拡大で注目BaaS×EVのトレンドとは…富士経済 エネルギーシステム事業部 佐藤浩司氏[インタビュー]

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来たる2月22日、「xEV・車載二次電池の長期市場予測とBaaS」と題したオンラインセミナーが開催される。xEVおよび搭載される車載二次電池の長期市場予測を通じて、車載二次電池の需給バランスを考察するとともに、xEVの拡大に伴い注目される車載二次電池の有効活用策としてのBattery as a Serviceについても注目トピックを紹介するという内容だ。

セミナーの詳細はこちらから

セミナーの開催に先立ち、登壇する富士経済 エネルギーシステム事業部 第一部 主任の佐藤浩司氏に、セミナーの見どころについて聞いた。

■EVバッテリーを合計すると新設導入の定置型の10倍以上に

---:それでは、セミナーの見どころについてお聞きしたいのですが、テーマにも挙げられているBaaSについて、これはどのような内容でしょうか。

佐藤:はい。こちらは2021年のEV普及台数をもとに、搭載されている電池の容量をまとめたグラフです。2021年に世界中のEVの電池をかき集めると、600GWh以上の電池があるという計算です。いっぽうESS(定置用)については、家庭用や産業用などいろいろありますが、ESSとEVのバッテリーの規模を比較するとどうなるかというと…

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ESSは、基地局のバックアップ電源や家庭用、太陽光発電併設のものなどを全部含め、新設導入分全体で55GWhです。つまりEVに載っている電池はその10倍以上の規模があるので、これを有効活用しない手はないということです。

EVを利用したサービスはすでにいろいろありますが、特にBaaSということでは、V2Xやバッテリースワップ、防災電源としてのEVの利用、バッテリーリユースなどのサービスがあります。

V2Xについて説明したものがこちらです。

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V2X対応の充電器とEVを組み合わせることで、電力が足りない時にEVから送電をすることができます。これによって、バーチャルパワープラント(VPP)、消費電力のピークシフト、出力平準化などにEVを利用可能になります。これらの用途は再エネ比率の上昇とともに重要視されておりますので、V2Xの活用にも期待が高まっています。

また、地震や台風などの防災時に、防災電源としてEVを活用することができます。

こういった家庭用のV2XであるV2Hや、系統・事業所向けのV2XとしてのV2G / V2Bに関する実証実験が自動車OEMを中心に進められています。

---:EVのバッテリーを活用するビジネスとして、V2Xが本命視されているということでしょうか。

佐藤:そうですね。一番わかりやすい使い方だと思います。例えば日本でいうと、卒FITの家庭がだんだんと増えていきますが、ソーラー発電の自家消費をするために蓄電池を導入しようという話になった際に、家庭用蓄電池ではなくEVを蓄電池として使おう、という話は理解しやすいストーリーだと思います。

---:卒FITの家庭が、蓄電池を買う代わりにEVを買うということですね。

佐藤:そうですね。実際に日系OEMがEVの電池で家庭用の電力をまかなえます、といった訴求をしていますが、こういう事例は一般消費者としてもわかりやすいと思います。

---:最近は電気代がすごく高くなって、私もびっくりしているんですけれども(笑)、毎月数万円という状態が続くと、ソーラーパネルで自家発電して、蓄電池の代わりにEVにしようかな、というのはリアルなシナリオとして感じられますね。

佐藤:そうですね。あともう一つ、バッテリースワップというサービスについても紹介したいと思います。EVへの給電方式として、充電するのではなく、電池そのものを交換するものです。

中国を中心にバッテリースワップが最近注目されています。背景には電力供給余力の問題や充電インフラの不足があり、中国では急速充電ユーザーの急速な増加に伴い日中の充電規制や充電渋滞が発生するなど問題が生じています。バッテリースワップであれば、交換ステーションの中で電池を付け替えるので、だいたい数分程度で交換完了でき、こうした問題を解決することが期待されています。よりガソリン車に近い感覚でEVを使える環境を提供するイメージですね。

また、電池のコストを分離して車両だけで販売し、電池をリースなどで提供する販売方式によってEVのイニシャルコストを抑えるメリットもあります。

通常、EVは電池の劣化によって中古価格が下がりやすいのですが、バッテリースワップによって電池は常に新しいものを使えるので、車両価格、中古車市場に対しても良い影響を与えられるものと考えます。

また、電池交換ステーションを運営する側のメリットとして、電池をストックしているので電力の高い急速充電を多用せずに済み、それによって電池の劣化を抑制することができますし、ピークシフトして電力系統の負担を抑えることもできます。

車両設計の標準化やステーションの運営の採算性などの課題もありますが、中国以外のエリアでも注目されつつある技術です。

---:NIOがバッテリーのサブスクリプションをやっていますね。私が気になるのは、1台に1個以上のバッテリーを用意しないと成立しないので、そのコストは結果的には消費者が負担することになると思うのですが、いかがでしょうか。

佐藤:中国の場合は、バッテリー交換ステーションの運営は別会社がやっているケースが主流です。EVを販売するメーカー側としては、余剰な電池を抱えるというのはリスクになり得るので、その部分をビジネスとして分離しているというのが中国のトレンドです。こうした背景から、消費者へのコスト転嫁は顕著な印象はありません。むしろ前述した車両と電池コストの分離によるイニシャルコストの低下や、中古車価格の残価率維持など、消費者にとって金銭的負担が少ないソリューションを提案して普及を推進しているイメージです。

---:V2Xについてもうひとつ質問があります。この図のようなV2X社会を実現するためには、EVが駐車している間に繋いでおく高精度な普通充電器が必要になると思うのですが、つまりクラウドに繋がっていてV2X系のプロトコルに対応している普通充電器といったものですが、これに関してはなにか動きはあるのでしょうか。

佐藤:自動車OEMと充電機器メーカーの間で共同開発が進んでいますが、プロトコルの共通化は初期段階だと感じます。V2Hを中心に先行するCHAdeMO陣営に対して、V2Xの商用化では後発となるCCS陣営との標準化争いが続くのか、または協調していくのかにも注目しています。

佐藤氏が登壇するオンラインセミナー「xEV・車載二次電池の長期市場予測とBaaS」は2月22日開催。申込締切は2月20日正午まで。詳細・お申込はこちらから。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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