トヨタの環境チャレンジは工場も脱炭素化
トヨタは2015年に「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表し、2050年までに工場のCO2排出ゼロ(オフセットゼロ)に向けた取り組みをスタートさせている。技術革新とプロセス改善によって、2001年から2020年比ですでに半分ほどのCO2削減を達成しているという。今後はリサイクル・リユースの促進、CO2の回収・固定、再生可能エネルギーへの切り替えを進める。グローバル工場では2035年までに工場のカーボンニュートラル(CO2クレジット適用を含む)達成すると目標を前倒ししている。
トヨタ自動車 車両製品技術開発部 村田亘氏は「高機能素材Week 2022」において、工場の脱炭素化に向けた取り組みとそれに貢献する新塗装技術のセミナーを行った。
トヨタのカーボンニュートラルへの取り組みについて、いまさら詳細を語る必要はないと思われるが、自動車関連媒体では主に車両の電動化やバッテリー製造、LCAにフォーカスする議論、記事が多い。今回のセミナーは工場全体の製造技術や資源・エネルギー問題にフォーカスしたものだ。
工場のカーボンニュートラルは、グローバルな課題・規制でありトヨタに限った問題ではない。海外生産拠点を持つ製造業全体が取り組んでいる。
グリーンファクトリーの3本柱、「からくり」で省エネ
トヨタでは「グリーンファクトリー」達成のため、1.日常改善、2.ものづくり革新、3.再エネ・水素の3本柱を打ち立てている。
日常改善では、無駄を排除する6つの心得を提唱し、工場ライン他で実践している。6つの心得とは、以下のとおりだ。
ヤメル
トメル
ヒロウ(拾う)
ナオス
サゲル
カエル(変える・代える)
“ヤメル”例としては、ライン上の動力を日本古来の「からくり」に置き換え省力化を図る。部品のローディングにコンベアなどを使わず重力やばね機構を活用する。“ヒロウ”例では排熱の利用といった具合である。
ものづくり革新の取り組みでは、材料のミニマム化、スペースのミニマム化、加工数のミニマム化を指標にしている。技術開発によって材料の効率利用、削減を模索する。新しい技術や設備の刷新、プロセスの変更によって加工工程も減らす。
工程別CO2排出力と水に着目
ものづくり革新で目を付けたのが水だ。世界的にみれば水は貴重な資源である。日本は水に恵まれているので忘れがちだが、グローバルでは水を使わない、排水しない、汚さない工場のニーズは非常に高い。
トヨタの場合、グループで連結対象となる企業、関連の製造会社のうち135社の工程別CO2排出力を調べたところ、塗装が全体28%とトップだった。そして塗装は大量の水を消費する工程でもある。