スマートシティとMaaSが密接な関係にあることは、このコラムの初回で書いた。ただMaaSはマイカー以外のあらゆる交通をシームレスにつないで提供するという概念であり、どんなにデジタル技術が進歩しようとも、前提として質の高い公共交通がなければ成立しない。
地方の公共交通は以前から、人口減少や市街地の拡散化によって、厳しい運営状況にあり、新型コロナウイルス感染拡大で状況は悪化している。しかしその一方で、地方移住や高齢者の運転免許返納など、追い風になりそうな流れもある。
そんな中で一部の都市では、質の高い公共交通を提供すべく、バス改革に乗り出している。青森県第二の都市である八戸市はそのひとつだ。
◆共同運行路線として事業者間を調整
青森県南東部、太平洋に面した八戸市の人口は約22万人と、県庁所在地である青森市に次ぐ規模を誇る。ちなみに2009年当時の人口は約24万人であり、微減となっている。日本の都市では良くあることだが、八戸市は中心市街地と表玄関にあたる鉄道駅がやや離れている。JR東日本(東日本旅客鉄道)東北新幹線・八戸線および第3セクターの青い森鉄道が発着する八戸駅は中心市街地の西5kmほどの場所にあり、中心部の最寄り駅は八戸線本八戸駅になる。
といっても一部の新幹線駅のように、八戸駅が最近開設されたわけではなく、合併前の長苗代村に1891年、所在地の名前を取って尻内駅として開業した。本八戸駅の開業は3年後で、昔はこちらが八戸駅を名乗っていたが、1971年に両駅とも現在の駅名に変更している。
八戸市がバス改革に乗り出したきっかけは、2007年に施行された「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」だった。八戸市地域公共交通会議が設置され、地域交通が専門の大学教授をアドバイザーに迎えて協議を進めた結果、2年後に「八戸市地域公共交通総合連携計画」が作成され、2010年以降実施に移された。
八戸市には八戸市交通部の市営バス、みちのりホールディングス傘下の岩手県北自動車が走らせる南部バス、十和田観光電鉄の十鉄バスが走っている。しかし以前は各事業者が独自にバスを走らせていた。その結果、メインルートとなる八戸駅と中心市街地の間は便数が多すぎ、需要があるのに収益が悪いという問題が発生していた。