自動車業界におけるシェアリングビジネスというと、カーシェアをイメージする人が多いだろう。実際、日本のカーシェアリング車両台数は急速に増加している。
◆カーシェアによるエコロジカルな社会の創造
交通エコロジー・モビリティ財団の調査によると、2010年以降は年率3割を優に超える水準で増加しており、2022年にはついに5万台を突破した。カーシェア運営事業者の延べ会員数が260万人を超えたことを考えても、普及が着実に進んでいることは間違いない。

一般的なカーシェアビジネスでは、運営事業者がカーシェア専用のクルマを用意する。そのため、カーシェアサービスの提供を通じてクルマの運用コストを上回る収益を得られなければビジネスとして成立しない。平日から休日、朝から夜に至るまで一定の稼働を得られる場所でのサービス提供が基本となる。
対して、DeNA SOMPO Mobilityが運営するAnyca(エニカ)であれば、そのようなハードルは存在しない。一般の個人・法人が所有するクルマの使っていない時間を貸し出すサービスだからだ。平日、仕事に使っているクルマであれば、休日の空いている時間だけを貸し出すことになる。休日にだけカーシェアの利用が集中するエリアであれば、最適なマッチングとなるはずだ。もちろん、その反対も然りである。
自家用のクルマであればこそ、カーシェアで十分なリターンを得られずとも支障はない。カーシェアのためにクルマを確保するのではなく、自家用車の所有者と、クルマを必要なときにだけ利用したいユーザーをマッチングするビジネスであれば経済性を満たしやすいということだ。新規にクルマを調達する必要のないことを考えると、エコロジカルな社会の創造にも寄与するビジネスといえよう。
◆駐車場シェアリングによるカーライフの革新
シェアリングの対象はクルマだけではない。2009年に大阪で設立されたakippa(アキッパ)は、駐車場のシェアリングサービスを提供している。
駐車場の時間貸をしたければ、コインパーキングにすることが一般的である。しかし、コインパーキングを始めるにあたっては、精算機、パークロックシステム、看板などを設置するための設備投資を要する。その分に見合う駐車料を得られるとの目算が立つ場所でなければ、コインパーキングとして活用することは困難だ。