「業界の常識」に挑戦することの重要性…物流施設は「所有と利用の分離」へ

デベロッパーの登場で物流全体の効率化が加速

施設以外のリソースによりデベロッパーの役割が拡大

「常識からすればあり得ないビジネスモデル」にこそ、勝機あり

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  • 従来型物流施設とマルチテナント型大型物流施設の特徴
  • 物流施設のDX
  • 「東海太田川駅西土地区画整理事業」区域内に計画されている プロロジスパーク東海1(右)とプロロジスパーク東海2(完成予想図)
  • プロロジスパーク八千代1(2022年10月竣工予定)
  • 大和物流(大和ハウスグループ)の東大阪物流センター
  • 大和ハウス工業のDPL沖縄豊見城II(左)とDPL沖縄豊見城
  • 三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)海老名I

物流施設のデベロッパーは、その成り立ちからして、物流の世界に新たなビジネスを創造したと言える。「所有と利用の分離」という今までにはなかった概念を持ち込んだからである。

◆デベロッパーの登場で物流全体の効率化が加速

かつて、倉庫や配送センターなどの物流施設は「所有者による運用」が一般的だった。所有と利用は一体化していたのである。ゆえに、在庫の置き場を増やそうとするなら、自社で物流施設を建設するか、物流施設の所有者兼運用者である物流会社(倉庫事業者)に在庫の管理を委託する必要があった。

時を経て、自社の物流施設の管理を物流会社に委託する荷主が増えてきた。つまり、オペレーションの分離が進んだというわけだ。しかしながら、荷主でも物流会社でもない第三者が物流施設を建設することはなかった。それゆえ、複数の荷主、物流会社が入居することを想定したマルチテナント型の大型物流施設はほとんど存在しなかったのである。

物流施設のデベロッパーは、この状況に風穴を開けた。日本では2000年以降、プロロジスやGLPといった外資系デベロッパーの参入を契機に、マルチテナント型の大型物流施設が急速に増加し、現在では新設される物流施設の過半を占めるに至っている。大和ハウス、三井不動産、オリックス、住友商事などの様々なバックグランドを有する日本企業も事業参入を果たした。物流施設の床面積の広さは入出荷作業の生産性にある程度まで比例すること、トラックが2階以上に直接乗り入れることを可能とする傾斜路「ランプウェイ」の設置は積卸作業のリードタイム短縮に資することなどを考えると、デベロッパーによる大型物流施設の開発は物流全体の効率化に寄与したといっても過言ではない。


《小野塚 征志》

株式会社ローランド・ベルガー パートナー 小野塚 征志

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。 ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革、リスクマネジメントをはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開。 内閣府「SIP スマート物流サービス 評価委員会」委員長、経済産業省「持続可能な物流の実現に向けた検討会」委員、国土交通省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員、経済同友会「先進技術による経営革新委員会 物流・生産分科会」ワーキンググループ委員、日本プロジェクト産業協議会「国土創生プロジェクト委員会」委員、ソフトバンク「5Gコンソーシアム」アドバイザーなどを歴任。 近著に、『ロジスティクス4.0-物流の創造的革新』(日本経済新聞出版社)、『サプライウェブ-次世代の商流・物流プラットフォーム』(日経BP)、『DXビジネスモデル-80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』(インプレス)など。

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