8月2日、日産自動車主催の「日産サスティナビリティセミナー2022」が開催された。同社は毎年「サスティナビリティレポート」としてESG、SDGsへの取り組みや現状課題などを文書として公表している。セミナーではその内容のプレゼンテーションに続き、識者によるパネルディスカッションも行われた。

パネルディスカッションでは、羽生田慶介氏(オウルズコンサルティング CEO/経済産業省大臣官房臨時専門アドバイザー)がモデレーターを務め、パネリストには近江静子氏(JPモルガン・アセット・マネジメント スチュワードシップ統括責任者)、江守正多氏(東京大学未来ビジョン研究センター教授/国立環境研究所上級主席研究員)、田川丈二氏(日産自動車専務執行役員/チーフサスティナビリティオフィサー)の3名が登壇した。
SDGsやカーボンニュートラルというと、自動車業界では脱内燃機関、EVシフトの文脈で語られることが多い。また、マクロ的な話題のため産業界においては経済合理性に反するもの、あるいは自分の世代には関係ないと、真剣に向き合わない傾向がある。だが、この感覚は少々古いかもしれない。
サスティナビリティの方向性は揺るがない
3名のパネリストのうち、江守氏は気候変動・気候モデル研究の第一人者のひとり。IPCCの気候変動に関する報告書の執筆にかかわっている。近江氏はJPモルガンでコーポレートガバナンスの投資家の行動規範(ソフトロー)を担い、ESGやサスティナビリティ投資に関して世界中の企業と向き合っている。日産自動車の田川氏は、カーボンニュートラルのロードマップにおける重要ステークホルダーのひとりで、金融機関からESGといった視点でグローバルビジネスの企業価値を評価される側だ。
モデレータ羽生田氏の「カーボンニュートラルの方向性はすでに決まっている。今回は科学、金融から最前線のパネリストを招いたので本音の話が聞きたい」という言葉から始まった。さっそくの質問は、気候変動のティッピングポイントまでの残された時間に、対策は間に合うのか? というもの。
