ステランティス、日本での好調をアピール…2022年も新型車多数を投入

ジープ80周年を記念した限定⾞
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FCAジャパングループPSAジャパン代表取締役社長のポンタス・ヘグストロム氏は、7ブランド全てにおいて昨年:2021年の振り返りと今年:2022年の様相を記者会見にて語った。

◆もっともグループの台数をけん引したジープ

2021年はジープ生誕80周年という記念すべき年。「それを彩るかのようにジープは過去最高の販売台数を記録し、8年連続で前年を上回った。10年以上にわたって成長を続け、その間に販売台数は14倍になった」とポンタス氏は胸を張る。そこに至るために、「ブランド認知と製品力を磨き続けてきた。右ハンドルのみのラインナップ、地デジ対応の日本仕様のナビゲーションを開発、エンジンの小排気量化など、お客様の声を聞き続けた結果だ」という。

ブランド認知やイメージ改善にも投資を続け、そこに共感したディーラーも、「既存店舗の改装と、多店舗化に多大な投資をしてくれた」。これらが功を奏して「2021年、日本は世界で7番目のマーケットとなった」。1位はアメリカ、2位ブラジル、3位イタリア、4位カナダ、5位中国、6位ドイツである。

コミュニケーションにおいても、「全国のジープオーナーに自身とジープの関係が分かる写真とメッセージを募集したところ、700を超える応募があり、80周年を記念して出稿した広告は製品やスペックではなく、ジープとそのオーナーの写真によって埋め尽くされた。ジープブランドを形作るのはお客様なのだ」とコメント。

D-SUVランキング:ラングラーの躍進D-SUVランキング:ラングラーの躍進

製品では『ラングラー』が「成功の立役者」とポンタス氏。昨年は9つの限定車を導入するとともに、「途切れることのない製品関連のストーリーと、高い中古車価格、ラングラーしか持ちえない独自性」が大きな要因で、昨年は、「過去最高の約7000台を達成。日本で最も支持された輸入SUVとなった」とコメントした。

また、昨年は『コンパス』も「大健闘」。リフレッシュされたインテリアと最新テクノロジーを搭載したことで販売台数を大きく伸ばした。「昨年2月には500台超を販売し、月販台数記録を塗り替え、その結果年間販売台数は2600台を超え年間でも過去最高を更新した」という。そして『レネゲード』も3800台以上を販売し新記録を達成した。

ジープ・グランドチェロキーLジープ・グランドチェロキーL

2022年は「矢継ぎ早に新製品を登場させる」とポンタス氏。『グランドチェロキーL』の販売開始が目前に迫っており、その直後には『グラディエーター』も控えている。このグラディエーターは発表後2週間足らずで「150台を受注」。ポンタス氏は、「グラディエーターはジープのクールなイメージを強化してくれ、グランドチェロキーLはブランドをよりプレミアムなステージへと誘う」とし、この2車種は「ジープの製品ポートフォリオを広げるだけでなく、顧客基盤の拡大にも貢献してくれるだろう」とコメントした。

同時に店舗数も強化。「今年は新たに10拠点をオープンし、最終的には全国に100拠点体制を目指す」とした。

プジョー:POWER OF CHOICEストラテジープジョー:POWER OF CHOICEストラテジー

◆パワーオブチョイス戦略で快進撃のプジョー

「全てにおいて好調」とポンタス氏は高評価だ。「2014年と比較し販売台数はほぼ2倍の1万2000台近くとなり、対前年比で12%も伸びた」という。

その成功要因は大きく3つ。まず、「プジョーが元々強かったBセグメントに投入された『208』と『2008』だけで昨年は6000台以上を販売し、208はプジョーの総販売台数のうち28%、2008は21%を占めた」ことを挙げる。特に2008は、「国産と輸入車が入り乱れて混戦のセグメントで大健闘し、アーバンSUVを志向する層に支持された」。

次に、「新しいプジョーのデザイン言語をまとい、昨年フェイスリフトを受けた『3008』も好調だ」と述べ、「PHEVの『3008GTハイブリッド4』は、4WDとPHEVの組み合わせを探していたお客様をブランドへと誘引してくれた」と話す。

3番目は、「ロゴ刷新を含む魅力的なマーケティング施策により新規顧客が開拓できたこと」を挙げる。坂本龍一氏を起用したテレビCMもプジョージブランドへの興味喚起に貢献した模様だ。

プジョーではガソリン、ディーゼル、PHEV・BEVという選択肢をユーザーに提供する“パワーオブチョイス”を推進。顧客はライフスタイルや予算、ニーズや環境性能に応じて好きなパワートレインを選択できる戦略だ。例えば3008PHEVの販売比率は15%、2008ならびに208のBEV比率は10%で、「日本の乗用車の電動化比率は全体で5%程度であることからプジョーの電動化比率はかなり高いといえる」とこの戦略が上手く行っていることを明かす。

プジョー308 / 308SW新型プジョー308 / 308SW新型

さて、今年は『308』が導入される。パワーオブチョイス戦略のもと、308にはガソリン、ディーゼル、PHEVがラインナップされ、ボディタイプもハッチバックとステーションワゴンが用意される予定である。

このように堅調に台数を伸ばしていることから、「プジョーでも販売販売網の見直しを始める。新CIの導入に合わせて新規販売拠点の増設を視野に入れ、販売拠点を拡充。既存のディーラーが優先されるが、ステランティスの他ブランドからの新規参入も歓迎する」とポンタス氏は述べていた。

フィアット500eフィアット500e

◆今年は500eを導入、限定車も10車種予定のフィアット

続いてフィアットも好調だ。「昨年は月間販売台数で3回も記録更新。年間でも6000台を大きく上回る台数を売り上げ、過去最高を更新した」という。

その最大の功労者は500ファミリーだ。「年間4900台近くを売り、販売開始から13年が経過しているにも関わらず、新たな記録を打ち立てた」と驚きを隠さない。この人気は、「2008年に始まった、オーナーやファンのコミュニティが勢いを増していることにある」という。毎年7月にはフィアット『500』の誕生日を祝い、フィアットピクニックでユーザー同士が集っている。フィアットの公式インスタグラムは3万5000ものフォローを獲得している。

2022年は新たに「『500e』とフルEVとしては世界初のコンバーチブルとなる『500eカブリオ』を導入」するとともに、「限定車も年間で10モデルを予定している」という。ポンタス氏は、「これらの販売に弾みをつけるためにも販売拠点の拡充は必須だ」とし、店舗数拡充にも力を入れるとのことだ。

アバルト695 Anno del Toroアバルト695 Anno del Toro

◆限定車ビジネスが好調のアバルト

アバルトは、「常に特別なものを探している、真の愛好家に愛され続けているブランドだ」とポンタス氏。「その人たちの期待に応えようと限定車を矢継ぎ早に出した」。丑年をモチーフにした『695アンノ・デル・トーロ』はウェブ限定で20台限りだったところに、「600件を超える注文をいただいた。同じく60台限定だった『595モンスターエナジーヤマハ』にも600件近い注文をいただいた」と限定車ビジネスも好調で、「アバルトはやんちゃな製品ほど受けがいいですね」と笑う。

アバルトの年間台数は前年を下回ったが、これは「『124スパイダー』の販売終了によるもので、595ファミリーは依然として根強い人気を誇っている」とのことだった。

そして、「2022年はフィアット同様アバルトも限定車を用意している」と述べた。

シトロエンC5エアクロスSUV PHVシトロエンC5エアクロスSUV PHV

◆フラッグシップ投入予定のシトロエン

シトロエンは、「2013年から成長軌道を描き続け、昨年はこの10年でもベストな実績を上げた。販売台数は5700台を超え、伸長率にも目を見張るものがある」とポンタス氏。

その成長を支えたのが『ベルランゴ』だ。「昨年は2700台以上が販売され、早くもユーザーによるコミュニティが形成されつつある」という。

もうひとつ、「オーナーや新規顧客を巻き込むリアルなイベントを開催したことが挙げられる」と述べる。そのほか“アヴェックシトロエン”というオウンドメディアも立ち上げ、「オーナーのストーリーを御覧いただける」。その目的は、「シトロエンのファンやオーナー、そして未来のお客様とのエンゲージメントを高めることにある」とオーナーに視点を当て、そこから魅力を伝えていきたいことことを伺わせた。

昨年はシトロエン初のPHEV、『C5エアクロスSUVプラグインハイブリッド』も発売。現在PHEVの販売割合は18%となっている。

シトロエンC5XシトロエンC5X

1月7日には『C4』、『E-C4エレクトリック』がデビュー。続いて第2四半期には、『C5X』が登場する予定だ。

「プジョー同様、ネットワークへの投資も進めていく」とポンタス氏。「既存のお客様の近くにサービス拠点を配備し、新たなお客様がシトロエンの製品に容易にアクセスできるようにしたい」という。そこで、「今年から本腰を入れて販売ネットワークを拡充していく」とした。

◆限定車とトゥナーレを投入し前年比増を狙うアルファロメオ

アルファロメオは対前年比40%超を記録。「新装備を採用したヴェローチェグレードの『ジュリア』と『ステルヴィオ』が販売を牽引。この新トリムのおかげでステルヴィオの販売はジュリアに肩を並べるまでになり、このトレンドは続いていくと予想する」と伸びしろがまだあることを明かす。この結果、登録台数は、「コロナ禍前の2018年、2019年レベルにまで回復した」と話す。

アルファロメオ・トナーレアルファロメオ・トナーレ

さて、昨年、『ジュリエッタ』は販売開始から9年目を迎え販売終了。10年間で約1万4000台を販売。また、『4C』と『4Cスパイダー』も累計958台を記録し世界3位の販売台数であった。因みに4Cの最終限定車は本来日本のために企画されたもので、「日本のアルフェスティを熱狂させただけでなく、本国のアルファロメオのスタッフたちも同じくらい熱狂した」そうだ。

もうひとつトピックとしては、『ジュリアGTA』と『ジュリアGTAm』が挙げられる。「わずか2週間の受注期間中に84台もの予約注文が入った」とのことだった。

今年はジュリアとステルヴィオの限定車、GTジュニアを皮切りに「沢山の限定車を企画している」と述べていた。そして、コンパクトSUVの『トナーレ』は「ワールドプレミアは春に、日本には第4四半期に導入予定」とされた。

DS 9DS 9

◆フルラインナップとなるDSオートモビル

続いてDSオートモビルだ。「ステランティスが保有するフレンチブランドの中で、EV比率が最も高いのがDSオートモビルで、PHEVである『DS 7クロスバックE-TENSE4x4』の販売比率は16%、BEVの『DS 3クロスバックE-TENSE』は21%に達している」とし、「DSオートモビルのエレガントさと、電動ドライブトレインの静粛性とスムーズさは絶妙な相性だ」とポンタス氏はコメントする。

そして、「フランスらしさを一切犠牲にすることなく、上質さと高性能をバランスさせたDSオートモビルは、ドイツ勢に真っ向勝負を挑めるブランドだ。ディテールにこだわり宝石のようなサーフェスとエッジを特徴的に組み合わせたデザインは、本物だけが持つ独自の世界観を本物が分かる人に提供する」と非常に強い個性を持つブランドだと説明した。

DSオートモビルの課題についてポンタス氏は、「類まれな特徴を知ってもらうために幅広いブランドコミュニケーション活動が必要」。以前テレビCMを展開した際には、「来店客数と受注がほぼ倍増した」とのことなので、認知度向上が必須項目のようだ。

DS 4DS 4

2022年は、「フラッグシップの『DS 9』がデビュー。全長5m、ホイールベース2.9mのセダンタイプ。続いて『DS 4』も導入する。そのデザインはアスリートを想起させる空力に優れた力強いスタイリングをまとい、徹頭徹尾、モダンで流れるようなスタイリングだ」と解説。

DS 9とDS 4導入と同時に、販売ネットワークの開発にも注力する。ポンタス氏は、「素敵な場所にブディックのようなショールームを増やす。間もなく札幌と横浜にDSストアをオープンさせる予定で、そのあとの計画も進んでいる」とのことだ。

フィアット・デュカートフィアット・デュカート

◆キャンピングカー市場に向けてデュカートを

最後に日本初導入のフィアットプロフェッショナル(フィアットの商用車ブランド)から、『デュカート』をデビューさせる。ただし、「混戦模様の商用車セグメントに参入するわけではなく、成長を続けるRVセグメント(キャンピングカー市場)に向けての導入だ。国産の強豪がほとんど存在しないセグメントに欧州からの絶対王者として参入する」と強気の姿勢を見せる。「宅配便のラストマイル配達用、中型の送迎用車両、キャンピングカーのベース車両にドゥカートはうってつけだ」という。

ビジネスモデルは、「B2Bを想定してるので、既存のブランドやネットワークと競合することはない」とポンタス氏。正式発表は2月10日から幕張メッセで開催されるジャパンキャンピングカーショー2022で行われ、同時にジープの新型グラディエーターもその場でお披露目する予定だとした。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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