グッドイヤーの新型スタッドレスタイヤ『ICE NAVI 8』が登場した。ICE NAVIシリーズは氷雪上性能に加え、優秀なドライ及びウエット性能を備えたバランス型スタッドレスタイヤだ。
新型ICE NAVI 8はICEブレーキとアイスコーナリング性能の向上を図って、シリーズとして初めて左右非対称デザインを採用した。アシンメトリックNAVIパターンと名付けられたデザインの特長は、ICE NAVI と比べてランド比(接地面積)を2%広げながら、周方向のブロック数を56個から68個へと21%アップしたところ。これによってトータルエッジ成分が7%アップした。
要は、ブロックを(少し)小振りにすることで同じ外径のタイヤならブロックが多く接地するのでエッジ成分が多くなるわけだ。これに加えて横溝やサイプ(極細溝)の向きの工夫と合わせて氷上ブレーキ性能が8%短くなっている。
接地面全体で強いグリップを引き出す
グッドイヤー ICE NAVI 8 試乗
氷上性能を高める一方、雪上性能も雪柱せん断力(≒雪道でグリップを作り出す力)を高めるため、溝の交差点を多く配置したデザインにもなっている。このデザインは横溝を見ると、トレッド面を横切るようにジグザクに配置されている(バイティング・スノーデザイン)。
ブロック剛性を整えることで停止状態の接地圧分の良さはもちろんのこと、コーナリング時でも接地圧を分散させることができ、接地面全体で強いグリップを引き出すことができるようになっている。
このほか、縦溝も単純なストレート溝ではなく、ブロックの配置を調整しながら溝の形状を最適化。雪上トラクション性能を高めている。タイヤノイズは、パターンノイズが31% 、ロードノイズも6%低減している。
コンパウンドも進化した。ベースとなるのは水を弾くことでタイヤと路面を密着させる撥水コンパウンド。これに小粒径のシリカを配合することで、従来よりもミクロの路面の凹凸に柔軟に対応でき実接地面積を広くすることができた。
さすがバランス型スタッドレスタイヤ
グッドイヤー ICE NAVI 8 試乗
今回の試乗は、都内を起点に志賀高原を往復する1泊2日の日程。印象的(?)だったのは、ドライの高速道路からドライのワインディングロード、そしてシャーベット路から圧雪路まで、すべての路面を快適かつ安心して走り切れたこと。当たり前と思われるかもしれないが、どんな路面を走っても安心して走り切れるというのは、タイヤにとってとても重要な性能だ。
さすがバランス型スタッドレスタイヤ(…と勝手に私が呼んでいるのだが)だけのことはある。もともとバランスの良かったスタッドレスタイヤだが、ICE NAVI 8になって全体にグレードアップした印象がある。
例えば高速道路では、路面を踏んだ時のあたりはマイルドなのに、意外なほどタイヤがしっかりしていて腰があるというかヨレるようなソフトな印象がない。
グッドイヤー ICE NAVI 8 試乗
タイヤの構造がフルカバーオーバーレイヤーといってタイヤの骨格のタガに当たる部分の補強がおこなわれていること、2層トレッドコンパウンドになっていて、ベースに高剛性ベースコンパウンドが採用されるなど、ソフトなスタッドレスコンパウンドを支える土台の部分の剛性がとれているからなのだろう。
ドライ路面の山道区間に入って感じたのは、高速道路で感じた土台尾のしっかりした感じに加えて、トレッド面がどこか一か所に負担をかけることなくきれいに設置している感触があるということだ。そのためカーブを多少速めのスピードで曲がっても、タイヤのエッジがガリガリ削れてしまうような様子がなく、スムーズにコーナリングできる。
手応えとクルマの動きがピタリと一致する
グッドイヤー ICE NAVI 8 試乗
で、気になる冬道の印象だが、これもよいものだった。タイヤの骨格がしっかりしているためなのか、雪を踏みしめたときの感触が手元にしっかり伝わってくるので、今タイヤが雪の路面をとらえている、というのが分かりやすい。
滑り出しそうになった時もグリップのあいまいになる様子がハンドルを通して手元に感じ取れるので、そろそろグリップの限界かな?というのがいち早くわかる。これはシャーベット状になったぬるぬる滑りやすい路面でも同様で、手応えとクルマの動きがピタリと一致しているので不安を感じることがなかった。
ついでに言うと、厚めのシャーベット路でも排雪性が良く、ヌルヌルした感触を残しながらも路面にコンタクトしている感触があるので、この点でも不安がなかった。
タイヤのべース部分のしっかり感≒ケース剛性が高いことが結果的に応答の良さやインフォメーション性の良さとなっている。ドライバーに優しい、あるいは親切なスタッドレスタイヤに仕上がっていると感じた。
斎藤聡|モータージャーナリスト
特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。