日本TIが絶縁型DC/DCモジュールを発表…インバーターの小型化に貢献

日本TI トランス内蔵型DC/DCバイアス電源モジュールを発表
  • 日本TI トランス内蔵型DC/DCバイアス電源モジュールを発表
  • 日本TI トランス内蔵型DC/DCバイアス電源モジュールを発表
  • モジュール化することで電圧精度や耐ノイズ性能も向上
  • モデルアーキテクチャ

日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)が9月29日に発表した「UCC14240-Q1」という絶縁型DC/DCバイアス電源モジュールは、絶縁トランスもチップ内蔵型としている。この意味を解説したい。

電動化パワートレインに欠かせないコンポーネントにインバーターがある。インバーターは、高圧の直流電源(バッテリー)から交流モーターの回転やトルクを制御するためのさまざまな交流波形を生成するものだ。直流を交流に変換するため、高速に動作(高周波)する半導体スイッチを利用する。この制御の要となるのがパワー半導体のゲート電圧を制御する信号(電圧)だ。詳細説明は省くが、400V前後の高圧直流電源(バッテリー)を、トランジスタで高速にON/OFFする「ゲート」信号によって高圧交流波形を生成している。

ここで問題になるのは、モーターを駆動するのは高圧だが、複雑なゲート信号は一般的な論理回路やマイコンなどで生成する。ECUなどマイコンの動作電圧が5V程度なので、この信号を直接高圧系に接続するのは避けたい。いかに制御系と高圧系を絶縁したまま回路としての接続を確保するかが重要になる。

通常、この絶縁にはフライバックトランス、プッシュプル回路(トランスを使う)、あるいはフォトカプラ(光学系素子)を利用する。だが、トランスの原理はコイルによる誘導電流によって絶縁された2次側に電力(電気)を励起するもの。トランスを使う場合、小型化が難しい。光学系は車両ECU環境での動作温度等からインバーターなどではほとんど採用されていない。

日本TIが発表した新しい絶縁型DC/DCバイアス電源用デバイスは、トランス部分を含めてワンチップ化されている。たとえばフライバックトランス方式で回路を作った場合、トランスを別部品として実装する必要があり、基板の高さが11ミリになるところ、今回のチップ(UCC14240-Q1)なら3.55ミリまで圧縮できる。厚さをとらないコンパクト化が、ECUやインバーターなどにおいてどれくらい効果があるのか。

設計者ならわかるが、インバーター回路には前述のトランジスタスイッチが大量に配置される。これも単純に説明すればスイッチが多いほど、交流の波形や位相を細かくたくさん生成できる。それぞれにゲート制御電源、トランス(絶縁部)が必要でとなる。ECUやインバーターの容積は、電動化パワートレインにとって小型軽量化は電費改善につながり、そのぶん航続距離を伸ばしたり、バッテリーを増やしたりできる。車両としてのパッケージデザインにも自由度が増す。

しかも、UCC14240-Q1は、第1世代のチップ(UCC12050)の最大出力0.5Wに対して1.5W(105°C)にアップしている。IGBT、SiG、GaNといったパワー半導体に対応する他、定格内なら複数のトランジスタをドライブできる。また、UCC14240-Q1は、保護回路や異常検知の出力ピンも備えている。ドライブ回路の設計を容易にしてくれるという。

以上の技術的な細部は、エンドユーザーにとっては直接関係するような項目ではない。しかし、電動車においても地味な細部の改善や性能アップの積み重ねが製品全体の性能や機能に現れる。

日本TIによれば、UCC14240-Q1の量産開始は未定だが、先行出荷状態にあるという。データーシートやユーザーガイド、評価キットやシミュレーター用モデルデータなどとともに注文があればすべてが出荷可能とする。先行出荷のロット単価(1ku)は4.2ドル。

《中尾真二》

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