うつむいてスマホを見ながら道を歩く、“歩きスマホ”。「ながらスマホ」とも呼ばれ、非常に危険な行為だ。歩きスマホ中、自動車・自転車とぶつかっても、警察を呼ぶ人は少ないという傾向が見られる。
株式会社Agooraが運営する弁護士相談ポータルサイト「交通事故弁護士相談広場」では、徒歩移動時にスマートフォンを利用する習慣のある15歳~70歳代の300人を対象にアンケート調査を実施した。
まず「毎日歩きスマホをする人」と「歩きスマホをしない人」はほぼ同数で、10人に2人が1日5回以上の歩きスマホ常習者だった。歩きスマホでしているアプリは「メールやLINE」「ブラウザでのインターネット」「地図・乗換案内」・「SNS」が多数だった。iPhoneユーザーは歩きスマホでゲーム・動画・SNSに夢中になる傾向があり、歩きスマホ中の衝突可能性も、iPhoneユーザーの方がAndroidユーザーより高い結果になった。
歩きスマホ中に物や人とぶつかるのは約13人に1人。ぶつかる主な対象は「歩行者」と「ガードレール」だった。特に前方からの衝突に注意が必要だ。また、歩きスマホでの交通事故は、警察を呼ばずに軽い対応をされるおそれもあるようだ。
歩きスマホ中、自動車・自転車にぶつかった経験のある人は合計で5人だった。自動車への衝突経験があると回答した人はそのうち1人だった。これらの人に、衝突後の対応について質問したところ、以下のような回答を得た。
●警察を呼び、交通事故として対応した:1人
●相手と言い合いなどトラブルになったが、警察は呼ばなかった:2人
●相手はそのまま自動車・自転車で立ち去った(相手とのやりとりはほとんどなし):1人
●その場で話し合いまたは謝罪をして、和解した:1人
道路交通法では、交通事故を起こした場合、自動車・自転車の運転者に警察への連絡を義務付けている。しかし、歩きスマホ中の衝突で、歩行者・運転者が警察を呼んで対応したケースは1件のみだった。
これについてAgooraは、「事故となると、歩きスマホをしていた歩行者側に一定の過失責任が問われる可能性はある。それでも、怪我の可能性のある被害を受けた場合は、運転者を停止させた上で、警察を呼ぶのが本来の対応だ」と解説する。
適切な対応を行なわずにその場をやり過ごすと、どうなるのか。Agooraは、「事故後に怪我が悪化しても保険金は下りない。負傷の治療費も自己負担で、どこに相談しても聞いてもらえず、泣き寝入り」と警告する。
自動車・自転車との衝突という危険なシチュエーションである点を考慮すると、法律に基づいた対応が軽視されている現状は、歩行者にとってリスクの高い状態と言える。
調査概要
●目的: 交通事故弁護士相談広場のサイト利用者に対して、より適切な対応が可能になるよう、スマートフォン利用者の歩きスマホの習慣・行動傾向、ならびに歩きスマホの交通事故への影響についての情報源の抽出
●実施:『交通事故弁護士相談広場』編集部
●回答方法:ウェブアンケート調査
●調査日時:2021年6月17~18日
●調査対象・回答者数
予備調査:全国の15~79歳以下の男女計3000人
本調査:徒歩移動時にスマホを利用した経験のある人300人(男性:149人+女性:151人。男女・世代ごとの回収数を2020年の日本人口構成にあわせて調査を実施)