自動車用燃料電池の市場規模は、2021年の2万0168台から年平均成長率62.2%で成長し、2028年には59万6225台に達する---。
グローバルインフォメーションは6月30日、市場調査レポート『自動車用燃料電池の世界市場(~2028年):コンポーネント(燃料プロセッサー・燃料電池スタック・パワーコンディショナー・エアコンプレッサー・加湿器)・出力・水素燃料ステーション・車両区分(乗用車・小型商用車・トラック・バス)・走行距離・地域別』(発行:MarketsandMarkets)の販売を開始した。冒頭の数字はこのレポートによる予測だ。
ローエミッション需要の高まりや、当局が優遇措置を通じて長距離走行可能なゼロエミッション車を支援していることなどにより、自動車用燃料電池の需要が拡大、メーカーは燃料電池車(=FCEV)を提供するようになってきている。当局による水素燃料インフラ整備への投資や、購入者へのインセンティブの増加は、メーカーにとって、収益源と地域的プレゼンスを拡大する機会だ。
レポートによると、アジア太平洋地域では費用対効果の高い低公害車への需要が高く、安定した成長が見込まれるという。北米市場は、当局の取り組みや高性能商用車の成長により、最も急速に成長している市場だ。しかし、水素ステーションの普及率が低いこと、初期投資にかかるコストが高いこと、性能面での制約などが、市場の成長を妨げるかもしれにい。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)発生当初は、世界中で新車の生産と販売が停止した。さ自動車産業は資本集約度が高いため、この生産停止と需要の低下は、FCEVメーカーや自動車用燃料電池メーカーにとって打撃だ。レポートによると、その後、状況は回復に向かい、2020年の後半数か月間はゼロエミッション車の需要が増加し、FCEVメーカー全体としては大きな落ち込みは見られなかったそうだ。
レポートは、自動車用燃料電池の世界市場の牽引要因を「燃費向上と航続距離の延長」、制約要因を「水素燃料インフラへの高い初期投資」と分析している。
●牽引要因
FCEVは、内燃機関(=ICE)車に比べて燃費が良く、FCEVの燃費はガソリン換算で約26.8km/Lだが、ICE車両の燃費はハイウェイで12.3km/Lだ。ハイブリッド化により、FCEVの燃費は最大で3.2%向上する。市街地での燃費は、ICE車の8.5km/Lに対し、FCEVは23.4km/Lていどになる。
FCEVとBEV(電池式電気自動車)では、満タン・満充電時の走行距離に大きな違いがある。FCEVは無給油で480km近く走行することがでるいっぽう、BEVの平均航続距離は、フル充電で約180kmだ。
●制約要因
水素ステーションなどのインフラ整備にかかる費用は、石油やディーゼルなどのICE車に比べて高額だ。そのため、他の代替燃料に比べて、水素燃料インフラの成長は遅れている。
効果となる要因は、水素燃料に必要な機器が高価であることに加え、水素の燃えやすい性質から、安全対策が必要となるため。水素燃料ステーションのコストは全体で約1億1000万~2億2000万円、ガソリン燃料ステーションは約2200万円、CNG燃料ステーションのコストも同程度約2200万円となっている。