NTNは5月24日、新規鋼材と特殊熱処理技術により、水素起因の軸受の早期破損を防止する「耐水素脆性軸受」を開発したと発表した。
自動車市場では電動化を背景に、動力伝達装置のさらなる高効率化が要求され、装置内の潤滑油量の低減、低粘度油化など、軸受には、より過酷な潤滑条件への対応が求められている。近年、水素原子が鋼材に侵入することで、鋼材の強度が低下する水素脆性により、軸受が早期に破損する場合があり、その対策が求められていた。
耐水素脆性軸受は、新規鋼材の採用と新たに開発した特殊熱処理技術により、この水素脆性による早期破損を抑制し、長寿命化を実現する。新規鋼材を使用した軸受の軌道面表層には硬質で微細な金属化合物が多数分散。希薄な潤滑条件下における金属接触でも摩耗しにくく、水素原子の発生源となる金属新生面の露出を抑制する。また、水素原子が発生した場合でも、微細な金属化合物が、水素原子の軸受内部への侵入速度(拡散)を抑制。その結果、開発品の寿命を同社標準軸受と比較して3倍以上に向上させることに成功した。
さらに、特殊熱処理工程における焼入れでは、軸受軌道面の窒素濃度を高める浸窒処理を行うことで、疲労が進行しにくくなるため、耐異物性も向上。異物混入潤滑条件下における長寿命化も実現している。また、新規鋼材は、熱処理工程におけるCO2排出量を減少させる成分を選定。環境負荷の低減を図っている。
NTNは開発品を、5月26日~7月30日に開催される「人とくるまのテクノロジー展2021 オンライン」に参考出展する。