変わる地域物流やコンビニ“サプライチェーン全体で”物流を最適化…内閣府 SIPスマート物流サービス担当PD 田中従雅氏[インタビュー]

変わる地域物流やコンビニ“サプライチェーン全体で”物流を最適化…内閣府 SIPスマート物流サービス担当PD 田中従雅氏[インタビュー]
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「自動運転(システムとサービスの拡張)」や「スマート物流サービス」など、府省や分野の枠を超えて、日本の経済・産業力にとって重要な12課題に取組む国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」。各課題はプログラムディレクター(PD)が産官学をまとめる強力なリーダーシップを発揮し、研究から出口戦略まで一気通貫で推進している。

モビリティサービスのデータ基盤の比較対象としても参考になり、今後CASEやMaaSに深く関係してくる「スマート物流サービス」。そのトップである内閣府政策統括官付SIPスマート物流サービス担当プログラムディレクター(PD)の田中従雅氏に、生産、流通、販売、消費までに取扱われるデータを一気通貫で利活用し、最適化された生産・物流システムを構築して社会実証を目指すSIP第2期の取組みについて聞いた。

田中氏が登壇する3月29日開催のオンラインセミナー 「サプライチェーンからサプライウェブへ~物流・商流の未来~」はこちら。

部分最適から全体最適へ

---:これから必要となる視点は何でしょうか?

田中氏:これまでは保管や作業効率の効率化、メーカー間での共同配送、庫内作業の省人化や自動化など部分的な最適化が個社単体で主に行われてきました。しかし、労働力不足、ニーズの多様化、環境への対応により物流分野でのSDGs達成には20~30%の生産性向上が必要になり、個社の努力だけでは越えられない状況になってきています。

これからは生産、流通、販売、消費までのサプライチェーン全体で取扱われるデータを一気通貫で利活用し、日本の物流の全体最適化を図る必要があります。スマート物流サービスでは、物流業界の市場規模25兆円の30%(経済インパクト年間約7.5兆円)の生産性向上を目指して取組んでいます。

物流・商流データ基盤の構築と自動データ収集技術の開発

---:具体的な取組みでは研究開発項目AとBの2つがあるようですが、具体的に教えてください。

田中氏:研究開発項目Aは、物流・商流データ基盤の構築で、サプライチェーンの上流から下流までをつないだ高度なデータ連携による全体最適化や新たな付加価値創造を目指すものです。生産予測・配車予測・仕入予測が困難であることや、返品や廃棄、作業員不足、伝票の不統一、フードロス、販売員不足といった諸課題の解決のため、物流・商流の情報をデータ基盤に集めて最適化を行っていきたいと考えています。

研究開発項目Bは、荷台情報、作業情報、重量・採寸情報など省力化・自動化に資する自動データ収集技術の開発です。日本の物流は約95%を中小企業が担っています。そのため他の業界よりも、なかなかシステム化や省力化・自動化が進まない状況にあり、それを改善する取組みです。

研究開発項目Aは2020年度中に要素基礎技術の開発、商習慣改革・標準化の検討、4業種の社会実装の検討を実施しました。2021年度では、4業種(日用品、ドラッグストア・コンビニ、医療機器、地域物流)の社会実装を進めていきます。研究開発項目Bは時間がかかる研究内容ですので2022年度までのスケジュールを引き、最終的には研究開発項目AとBを統合していく計画です。

日用品、医薬品、ドラッグストア・コンビニ、地域物流での挑戦

---:2021年度に取組む4業種(日用品、ドラッグストア・コンビニ、医療機器、地域物流)の研究内容は?

田中氏:日用品のサプライチェーンは、製造・配送・販売の垂直的連携、各層の水平的な連携が十分ではなく、納品トラックの待機時間の発生、積載率の低下、返品などの非効率を生じています。これらを解決するために、伝票電子化、検品レスによる作業時間の削減、待ち時間の削減、空車時間の削減と積載率の向上を目指します。

ドラッグストア・コンビニなどのチェーン小売りは、専用物流センターを配置し、個別最適の物流を目指してきましたが、近年は物流人員の不足・コスト増が深刻化しています。オリンピック・パラリンピックなどのイベント開催や過疎地域の拡大を見据えて、企業の枠を超えた物流共同化(共同保管・共同配送など)による生産性の向上や店舗配送トラック数の削減などに取組んでいます。

医薬品医療機器業界では、2020年度に取組みました、高度管理医療機器の自動認証によるサプライチェーン各プレイヤーの生産性向上の他、メーカー・ディーラー共同倉庫による流通在庫削減などを受けて2021年度はさらに検討を進めていきます。

地域物流においては、少子高齢化による労働力不足で、一部の地域ではこれまでの物流網の維持が困難な状況になってきています。メーカーや卸ではなく物流事業者が配送計画をコントロールする初めての共同配送の取組みを、岐阜地域をフィールドに進めています。

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《楠田悦子》

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