アルファロメオが、バレンタインデーに歴史とデザインが分かる電子書籍、パッシオーネを公開

アルファロメオ パッシオーネ
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アルファロメオは、バレンタインデーに合わせて、アルファロメオのデザインに関する情熱や歴史をまとめた電子書籍、『Passione(パッシオーネ;情熱)』をウェブ公開した。それを記念し、同社エクステリアデザインのチーフであるアレッサンドロ・マッコリーニ氏がアルファロメオのデザインについてウェブ上で説明が行われた。アルファロメオエクステリアデザインのチーフであるアレッサンドロ・マッコリーニ氏アルファロメオエクステリアデザインのチーフであるアレッサンドロ・マッコリーニ氏

デザインは最も重要なエレメント

「アルファロメオの長い歴史の中で、デザインは最も重要なエレメントだ」と話すのは、今回の電子書籍パッシオーネの企画を担当したアルファロメオグローバル広報の責任者であるアリエル・ガヴィラン氏だ。「我々のチェントロスティーレ(デザイン部門)の外にいるものにとって、デザインの理解は中々難しいが、このパッシオーネによってわってもらえるように作った」とその意図を語る。

パッシオーネは“Italian Roots”、“Heritage”、“Purity”、“Disruption”、“Red”、“Beauty is Everywhere”、“Beauty and the Beast”、“Design Melting Pot”、“Exploration”と9つのパートに分かれており、まさにローマ建築やルネサンス絵画などイタリアの歴史や文化とアルファロメオのデザインがいかに結びついているか、そして、同社の歴史的名車と現行車との関係性、さらにはアルファロメオ、ひいてはイタリアンデザインの本質にまで触れられている。また、近々発表が予定されているSUVの『トナーレ』のデザインに関してもしっかりと語られている。

パッシオーネはアモーレに続く

アルファロメオエクステリア担当チーフデザイナーのアレッサンドロ・マッコリーニ氏は、「パッシオーネ(情熱)というタイトルを付けたからには、やはりアモーレ(愛)が続く。そうするとバレンタインデーになるだろう。そう思ったので、このタイミングになった」と発行タイミングへのこだわり明かす。そして、「この書籍は文化と自動車という視点で作り上げた」という。

マッコリーニ氏は、1994年にインターンシップとしてアルファロメオに入社し、その後正社員になったことから、「本書に出てくることは全部知っていた。しかし日常のルーティンの中で、記憶の彼方に“蓋”をしてしまったようだ。そこで、この書籍を作っていくことで、記憶の彼方に行ってしまっていたものを、もう一度頭の中で整理した様な印象だ」と自身の中でもアルファロメオのデザインヒストリーを構築しなおす良い機会だったようだ。

72mmに込められた思い

マッコリーニ氏のプレゼンテーションはそのエンブレムの解説から始められた。「ミラノの紋章と、高貴なミラノのファミリーであるヴィスコンティ家の紋章とがそこには加わっており、わずか72mmにも関わらず非常に深い意味を持っている」と話す。そのデザインやカラーも年代によって微妙に違い、「戦争中にはサプライヤーが求める色を持っていなかったり、『アルファスッド』の時にはミラノの文字が外れたりという変化のほか、モータースポーツの勝利もこのエンブレムに結びついている。これが111年にわたる我々の栄光の歴史、シンボルと考えて欲しい」という。

アルファロメオ生誕の地、ミラノにあるスフォルツェスコ城にこのシンボルがある。また中にはロンダニーニピエタのミケランジェロの大理石の彫刻をはじめとした多くの彫刻が飾られている。これは、「ミラノは芸術都市であり、豊かな文化を持っていることを指している。まあ、エキスポが行われた後はとても発展した街であり、モダンと歴史とが融合しているのがミラノであり、それを象徴しているのがスフォルツェスコ城なのだ」とマッコリーニ氏。さらに、ミラノの風景を見ると遺跡のようなクラシックな建築物と最新のタワーが共存している。「つまりモダンとクラシックが共存している。クラシックを破壊することなくオリジナリティを保っていることが、まさにアルファロメオと共通するところだ」とミラノという都市とそこで生まれたアルファロメオの共通性を語る。

アルファロメオはエモーション

パッシオーネの冒頭にはオラツィオ・サッタ・プリーガ(アルファロメオのエンジニアで初代ジュリエッタなどを手掛けた戦後のアルファロメオのキーマン)のフレーズで、“大切なのは感覚であり、情熱である。我々は頭ではなく、心で感じる世界に身を置いている”と掲げられている。「これはエモーションについて語っており、パフォーマンスではない。つまり、性能が全てではない、それがアルファロメオであるということ」と冒頭に掲載した理由を述べる。

またマッコリーニ氏はアルファロメオのプロポーションを検討する際、「過去と現在のクルマをミックスして描き、それでラインやボリュームをどのように表現するかをリサーチする。レオナルド・ダヴィンチの表現解剖学の絵と比較し、人間の体のプロポーションとクルマのプロポーションは極論すると同じ基準点を持っている」と話す。具体的には、「1959年にカロッツェリアツーリングが製造した『ディスコヴォランテ』を分析すると、ぐるりと囲んだ360度ラインと、フロントの十字の紋様(とチューブラーフレーム)は梁とか腱、筋肉を見立てている。そのバランスを考える時にレオナルド・ダヴィンチの考え方が反映されている」と説明。つまり、「トナーレやディスコヴォランテで表現したかったことは、完璧なジオメトリーを表現するということだ」と結論付ける。

そういったアイディアは、「例えばローマ時代に作られたアーチと、1962年にカスティリオーニ兄弟が生み出したフロス社のフロアランプ“アルコ”と同じラインが見られる。こういうことを踏まえながら我々は自動車を考える時に様々な要素、文化にアイディアの起源を求めている」と述べた。

GTラインで個性を表現

その一方、自社のヒストリーにもアイディアを求めており、『SZ』とトナーレのフロントのエアベントとトリプルヘッドライトは共通であるという。特にヘッドライトは、「コンセプトは同じだが、テクノロジーの変化によってSZは階段上でこの時代はこれが先進だった。それが現代に移ると3ディメンションになるという時代の変化が読み取れる」と時代進化を明確に表現していることを強調。

また、サイドのキャラクターラインについても、「“GTライン”が共通だ。フロントのライトからリアのライトまでを結ぶドア窓の下のベルトラインだが、これによってクルマのデザインにスタビリティを与えることが出来、同時に、このラインがどのようにカーブを描くかによってそのクルマのキャラクターを見せることが出来る」と説明。それが「1960年代の『ジュリアGT』と、トナーレに共通性がある」とのこと。

さらに、『8Cコンペティツィオーネ』とトナーレを比較すると、「サイドウインドウとリアウインドウの形が似ている」とマッコリーニ氏。その理由は、「トナーレを一般的なSUVにしたくなかった。そこでその個性の鍵をどこに与えたらいいかを考えた結果、全くカテゴリーの違うスポーツカーから持ってきた。これこそがアルファロメオである。8CコンペティツィオーネのラインをSUVにも応用することによって個性的なSUVに仕立て上げたのだ」と述べる。アルファロメオ パッシオーネアルファロメオ パッシオーネ

もうひとつアルファロメオのデザインにおいて重要なのが「PURITY、純粋であること」とマッコリーニ氏はいう。「ピュアなラインこそタイムレスな美を引き出す。それが永遠であり、エタニティである」と話す。「ボートを見てみると、上下にラインが通り、その間にレイルサーフェス、線路のような線と間に挟まった面がある。これと前述のGTラインはそっくりだ。ボートは波の上を滑るように走るイメージであり、クルマはエアロダイナミクスを考えて滑らかに動くという共通点がある。そういうアプローチをサーフェイスにどう持ってくるかという研究の結果、60年代のGTラインとボートに共通点があったのだ」

二面性を持つアルファロメオ

アルファロメオのクルマ作りにおいては二面性を持つものが多くある。その点についてマッコリーニ氏は、その答えを絵画に求めた。「1605年にカラヴァッジオが制作した聖ロザリオの聖母という絵画の特徴は、一般人を手法によって高貴に見せていることだ。これも我々考えているアプローチのひとつで、表現によって与える印象を変えていくという手法も絵画から学び取っている」と明かす。

その一例として、マッコリーニ氏曰く、「神聖なモンスター、『カラボ』」を挙げ、「このグリーンのボディカラーも含めて驚かせるために作られたクルマだ」と紹介。1968年にベルトーネが制作したカラボのシャーシーは『33ストラダーレ』のものだ。このベース車はフランコ・スカリオーネがデザインしており、この2台を並べると、「同じシャーシーから作られているとは信じられない。まさにこれぞアルファロメオだ。多くの著名なデザイナーがアルファロメオのシャーシーを使って様々なクルマを作りたがった。それはシャーシーにポテンシャルがあり、このように全く違うものを作ることが出来るのもアルファロメオらしさのひとつだ」と述べた。

同時に1965年に登場した『ジュリアスプリントGTA』のベースとなるジュリアスプリントGTは、「家族のための量産車として作られた。それを軽量化し、パワーを加えることで、戦闘力のあるマシンに仕立て上げた。これもアルファロメオのやり方だ」。この例はいまでも活かされている。それは『ジュリアGTA』と『ジュリアGTAm』だ。『ジュリアクアドリフォリオ』をベースに「1965年のやり方をそのまま踏襲。外せるものは取り外すことで、さらなる軽量化し、力強いマシンに生まれ変わらせた。こういうことも、結局同じアプローチなのである。こういったことを理解すれば、益々アルファロメオのデザインが面白く理解できるのではないか」という。

一方現代車からモチーフを受け継ぐ場合もありこれもアルファロメオの二面性といっていいだろう。「アルファロメオは乗り手を選ばず、皆に愛されて、皆に愛してもらいたいと思っているクルマだ。そのコンセプト、小型でダイナミック、そして優れたパッケージングが一番表れているのが『MiTo』だ。コンセプトカーから出発して500台しか限定生産されなかった8Cコンペティツィオーネのスピリットを盛り込むことで、若者にトライしてもらいたかった。これもまたアルファロメオの精神を表現している」と語る。

マッコリーニ氏は、「トナーレのDNAや歴史的なクルマからどのようにインスピレーションを得たのか。またどのような要素をキーポイントにしたか。それは、文化や歴史など色々なことがアルファロメオのクルマ作りにおいて重要な役割を果たしたからだ。大切なことはスタイルだけではなく、その裏にある文化にアルファロメオは支えられているということ。それをこの電子書籍から感じ取ってもらいたい。それが一番の我々の望みだ」とコメント。

そして、電子書籍の最後に綴られている言葉こそ、「まさにチェントロスティーレの日々の仕事を語っている。過去を見ながら未来を作り出していく。そこに必要なのは文化とセンシティブなフィーリング、繊細な気持ちで築いていくことが大切なのだ。それを我々は“先祖”の中に見出す。過去を見ながら未来を構築していく、エモーションをどんどん作り出していくのが我々の仕事である」という。

この電子書籍の全体を見ることで、「もっと我々の視点がどこにあるのか、どういう部分に具体的に影響を受けたのかわかってもらえると思う」と語った。

この電子書籍パッシオーネはアルファロメオのホームページにて英語とともに日本語で読むことが出来る。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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