DX:デジタルトランスフォーメーションとは何か…苦行だった査定を起点に IDOM

向かって左が藤井氏、右が中澤氏。
  • 向かって左が藤井氏、右が中澤氏。
  • DXとは顧客との新たな接点を作ること
  • 「ガリバーオート」をコアに様々なサービスが有機的につながる。

経済トレンドのひとつに、フードデリバリーやキャッシュレスペイなど「生活およびオフラインへのデジタルの浸透」がある。このDX=デジタルトランスフォーメーションが浸透し、デジタルにリアルが内包された世界を「アフターデジタル」と呼ぶ。

IDOMは3月12日に東京の本社で、『アフターデジタル』の著書でビービットの藤井保文氏を招き、自動車査定のトータルサポートアプリ「GulliverAUTO」(以下ガリバーオート)のサービス提供開始半年を記念して、トークセッションを実施した。

DXとは接点頻度の変化、リアルがより重要視される世界へ

アフターデシタルでは、消費者が日常的にデジタルツールを使い、リアルを体験している。藤井氏は「たとえば中国ではフードデリバリーや自転車シェアリングがインフラになっている」という。

このリアルとデジタルの違いは、企業と消費者との「接点頻度」の変化と言える。デジタルが日常に溶け込み、オフラインの行動が存在しなくなり、デジタルが行動の起点になる。「リアルの接点がレアになり、『リアルの体験価値』が高まる」と藤井氏は説明する。

いっぽう、従来はオフラインだった行動がデジタルデータ化され、消費者個人に紐づく。そして蓄積された行動データからは、消費者のニーズのみならず、より深いインサイトを導くことができる。

「例えば、男の人が小さな赤ちゃんの姪っ子のめんどうをみることがある。おじいちゃんが孫の世話をすることがある。これらが行動データ。ところが乳幼児の育児製品の広告は、若い女性という属性データに紐づけられている」

つまりDXの本質とは、ビジネスサイドにとって競争原理の変化を意味し、顧客との新たな関係性、よりよい関係性の構築だと考えられる。「DXとは顧客との新たな接点を作ること。日本ではデジタルを付加価値のようにとらえている企業が多く、顧客を理解していない、最適な接点を得られていないケースが多い」と藤井氏はいう。DXとは顧客との新たな接点を作ることDXとは顧客との新たな接点を作ること

インサイト調査の重要性

IDOMでは、アフターデジタルへの第一歩として、自動車査定のトータルサポートアプリ「ガリバーオート」を、2019年9月にスタートした。トークショーの後半はIDOMのデジタルマーケティングセクション、セクションリーダーの中澤伸也氏が加わり、IDOMのDXビジョンについて語った。

自動車査定において、消費者にとっての競争ポイントは「どこがいちばん高く買い取ってくれるか」という価格評価だった。しかしDXへの挑戦にあたり実施した査定についてのインサイト調査によって、そもそも適正金額がわからない、来店する時間がない、心理的圧迫が辛いといった、“ペインポイント”が非常に多いことが明らかになった。

「査定は“苦行”。不満があっても、そういうものだと消費者もわれわれ企業も無意識に諦めていた。インサイト調査で深掘りして、マーケットの需要を顕在化できた」と中澤氏。

中澤氏はホームセンターで木工ドリルを買う人を例にあげる。「ドリルが欲しいのではなくて、板に穴を開けたいわけで、お店に穴の開いた板があればそれでよい」。こういう消費者のインサイトをとらえることが重要なのだ。「ガリバーオート」をコアに様々なサービスが有機的につながる。「ガリバーオート」をコアに様々なサービスが有機的につながる。

ガリバーオートを起点にDXへ挑戦

中澤氏は「査定でのそういったペインポイントを解消し、消費者にとってより気軽で楽しい体験にアップデートできないか、という観点で企画を出発した」という。

ここで藤井氏はUX(ユーザーエクスペリエンス)の「3層」概念を説明する。それは、人と人が1対1で接する「ハイタッチ」、1対多数の「ロータッチ」、1対無限の「テックタッチ」の3層だ。ハイタッチ=人接点は、消費者に感動や信頼をもたらす。ロータッチ=人・場所接点は心地よさや楽しさを提供する。テックタッチ=デジタル接点は、便利、楽、お得が価値観だ、

そしてIDOMの意図を「査定はワンタイムの体験。ここでのペインポイントを解消し、消費者との接点を増やそうとする」と、解説する。

IDOMの中澤氏は「まず顧客理解の深化、そして3層UXモデルによるグロースハックで、DXの実現を加速させたい」と語る。

カーライフでさまざまな意思決定をするとき、多くの消費者はまず、今ある車の資産価値を知るために、下取りや査定を考える傾向にある。査定の背景には「保険の見直し」、「車検」、「故障」など、きっかけとなる「起点」が存在している。

IDOMでは、この「起点」=「タイミング」を経営戦略やマーケティング戦略において重要視しており、その一環として、消費者の様々な起点に立ち会えるサービス「ガリバーオート」を構想した。「ガリバーオート」をコアに様々なサービスが有機的につながり、消費者にとっての日常的便利を提供する下準備を進めている。

《高木啓》

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