重とくな交通事故患者の医療最前線…自動車事故対策機構・千葉療護センター

NASVA千葉療護センター
  • NASVA千葉療護センター
  • すべての患者に目が届くオープンフロア病棟(千葉療護センター)
  • 千葉療護センターの小林繁樹センター長

自動車事故対策機構(NASVA)の千葉療護センター(千葉市美浜区)は11月8日、報道関係者向けに施設見学会を開いた。

同療護センターは、自動車事故による脳損傷で重とくな後遺症(遷延性意識障害)をもった患者を専門に治療する施設で、自動車損害賠償保障制度に基づく被害者援護の一環として独立行政法人のNASVAが千葉県の医療法人に運営を委託している。

NASVAは現在、全国10か所(合計300床)にこうした療護センターを設置しているが、千葉療護センターは1984年に最初の施設として開設された。首都圏を中心に患者を受け入れているため、全国でも最多の80床を擁し、医師や看護師そしてリハビリテーションを支える理学療法士ら約130人が従事している。

見学会で取材に応じた医師の小林繁樹・千葉療護センター長は、今後急ぎたい課題として新たな医療の導入や患者のニーズに即した短期入院の受け入れ拡充などを指摘した。センターでは患者のリハビリが中心となるが、機能回復を支援する新たな医療の可能性も広がっている。小林氏は、治験段階にある再生医療、あるいは脳に電気で刺激を与える電流刺激療法などを具体例として挙げた。

また、センターでは入院期間が最長3年と定められ、長期の入院患者が多いものの、2週間といったショートステイ型の入院を希望する患者の家族が増えているという。そうしたニーズを踏まえた施設面の対応も課題となっている。

全国の療護センターは保険医療を基本として運営し、不採算部分を自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)からの原資に基づく国の自動車安全特別会計から補てんを受けている。ただ、この特別会計の資金の多くが1994年度から95年度にかけて国の一般会計に繰り入れられ、自動車ユーザーが負担した資金が事故被害者救済など本来の目的に使えないという事態が長年続いている。

自動車業界団体で組織する日本自動車会議所は、NASVAなど関係先とともにこの問題に取り組み、2018年度には一般会計からの繰り戻しが15年ぶりに実現、19年度も継続された。繰り戻し額は18年度が23億円、19年度が37億円だが、なお約6000億円が一般会計にプールされた状態となっており、今年度も財務当局に繰り戻しを働きかけていく。

千葉療護センターの小林センター長はこの問題に関連し、「患者さんの機能回復に可能性のある取り組みは積極的に進めたいが、”不採算”となることが少なくない。一方で、今の社会はクルマがなくては成立せず、その結果、交通事故で年間1700人から1800人の方々が重症患者となっている。(一定の)不採算を許容いただき新たな取り組みができるようお願いしたい」と、訴えている。

《池原照雄》

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