インクリメントPは最先端の「エコマッピングシステム」をはじめ、アセアンでの活動を披露…ITS世界会議2019

シンガポールで開催されたITS世界会議2019に出展したインクリメントPのコーナー
  • シンガポールで開催されたITS世界会議2019に出展したインクリメントPのコーナー
  • シンガポールで開催されたITS世界会議2019は1万人を超える関係者が集まった
  • インクリメントPが整備したOPIデータのリスト
  • 「エコマッピングシステム」ユーザーと情報の共有を図り、地図データ更新の自動化を狙う
  • 「エコマッピングシステム」はユーザーの車両がセンサーとなって、IPCのデータとの差分をいち早く修正していく
  • 「エコマッピングシステム」では特にPOIデータの修正がターゲットとなる

地図事業を主体とするインクリメントP(IPC)は、2019年10月にシンガポールで開催された第26回ITS世界会議に出展。ユーザーと共に地図データのブラッシュアップを行う「エコマッピングシステム」をはじめ、アセアン地域内10カ国で展開する事業を紹介した。

5Gも睨んだ、コネクテッドカーによる「エコマッピングシステム」

会場で動画を使いながら紹介していたのが「エコマッピングシステム」だ。これは、地図を使っているユーザーとオンラインでつながることで情報の共有を図り、データの品質向上に役立てていくというもの。

IPCではすでに撮影した画像から、方面看板をはじめ、一時停止や制限速度などの道路標識など、定型化されたデータに対しては自動的にデータ化できる技術を持っている。その技術とユーザーから提供された情報を結びつけることで、地図データの品質向上を自動化させ、将来的には“即時更新”を実現しようというわけだ。

IPC第二事業部海外事業部マネージャー宮原 真氏は「地図データを製作する上で最もコストがかかるのがそのデータの確認作業にある」と話す。これまで更新データの確認には5mおきに撮影した映像を使い、ポイントを一つひとつ視認しながらチェックしていく人的作業が必要だった。宮原氏によれば「作業そのものは今後も継続はしていくが、この分のコストを上乗せしたことで採用が見送られることもある。競争力を保つためにもコスト削減は最重要課題になっており、エコマッピングシステムはその実現に欠かせないものと考えている」という。

この流れに追い風となっているのがコネクテッドカーの普及だ。富士経済の調査によればコネクテッドカーは2020年に3435万台となり、2035年には1億0250万台にまで急拡大すると予想する。今後は現在の4Gだけにとどまらず、より高速通信が可能となる5Gに対応したコネクテッドカーも登場してくるのは確実。

そうした状況下になれば「IPCが管理しているデータとの差分が発生すれば即座に修正することが可能となる。現地調査はIPCのスキームで確認し修正してユーザーのデバイスに反映。このサイクルを実現することでエコマッピングシステムの最適な環境作りに貢献する」(宮原氏)というわけだ。

アセアン地域内10カ国での地図データ整備を完了

一方でIPCは現地の地図会社から地図の版権を取得し、5年前から着手していたアセアン地域内10カ国での地図データの整備を完了させた。版権を取得しているため地図データはIPCの所有物であり、政府が管理するようなエリアを除いて細かな地図情報の改変は可能だ。その上で、「日本で培った高精度な都市地図や正しいルート案内をするための道路種別などのブラッシュアップを図っている」(宮原氏)という。ただ、これをカーナビ用として使うことはあまり考えていないという。なぜなら東南アジアではカーナビを使う文化はあまり根付いていないからだ。

そこでIPCがアセアン地域で進めているのが、これらをデータベースでオーダーされた各企業の要望に応じてカスタマイズして納める事業だ。たとえばライドシェアの「Grab(グラブ)」では同サービスを利用するためのドロップポイントやピックアップポイントを施設ごとに反映している。これが実現しているのは独自の情報をレイヤーとして反映させているからで、APIベースで利用させるGoogleマップとは大きく違う点でもある。宮原氏は、「ユーザーへ話を持って行く中で、整備を終えた地図データを情報レイヤーとしてデータベースで提供できるよう働きかけていきたい」と話す。

IPCでは現在、タイ・バンコクを拠点に現地採用者を含め100名近くが地図データの整備を進めており、これを足がかりにアセアン域内での地図データベース利用促進を図っていく考えだ。

《会田肇》

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