DeNAに映る自動運転時代のモビリティ…DeNA常務執行役員オートモーティブ事業本部長中島宏氏[インタビュー]

DeNAに映る自動運転時代のモビリティ…DeNA常務執行役員オートモーティブ事業本部長中島宏氏[インタビュー]
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「インターネット・AI×モビリティ」自動車業界とまったく異なる思考と速度でモビリティに旋風を巻き起こしている。彼らはどのようにビジネスを組み立てているのか。これまでのインターネット・AI×モビリティでわかったことは何か。自動運転の時代をどのように捉えているのか。DeNA常務執行役員オートモーティブ事業本部長の中島宏氏に聞いた。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。

高い技術力と事業スキーム
---:これまでの活動を通してわかったことは?
中島氏:DeNAのオートモーティブ事業は社会課題解決のために立ち上げました。インターネット・AI×モビリティを2014年に企画し、2015年からサービスを開始しはじめました。参入初期はグローバルではウーバーが盛り上がっていましたが、国内では日本のインターネットプレイヤーは誰もやっていませんでした。

これまでの活動を通してわかったことは「高い技術力」と「事業スキーム」この2点が非常に重要だということです。

インターネット企業といっても高い技術力がないと、生活に密着した価値をコンシューマーに提案することは非常に難しいです。特に大企業と連携しようとなると高い技術力が求められます。例えばアプリの使い勝手のみならずサーバーの安定性、大容量のデータをさばけるかなど。

また、アプリのコンテンツづくりと同じくらい、モビリティ産業の構造を捉え、既存とは違う着眼点でコスト構造を変える、商流を変える、コアコンピタンスを変えるなど、既存の延長ではなく違った視点でみて事業スキームを組み立てる必要性も感じました。

9人反対しても1人を信じられるか
中島氏: “何を信じるか”。社風などによってビジネスの組み立て方や進め方は大きく変わるのではないでしょうか。例えば社内で異なる価値観をもった10人が意思決定者としているとしましょう。9人だめだと言っても1人が「絶対いける」と言った場合に、その1人を信じて進められるか。多くの企業が9人の大多数の意見を採用し、その1人の意見は通らないことが多いのではないでしょうか。

---:“何を信じるか”。インターネット企業であれば9人が反対しても1人を信じることができる環境なのかもしれませんね。

新時代を信じられるかどうか
---:その1人のどのポイントを信じるのですか?
中島氏:新時代を信じられるかどうかではないでしょうか。所有から利用へ。手動から自動に変わった後の世界を想像できるかどうか。変わった後の世界で、マーケットとして魅力あるボリュームになっているかどうか。そこに会社としてかけられるかどうか。信じられるかどうかの判断ポイントはこのあたりかと思います。

2004年にモバオクというオークションサービスをはじめました。その当時は、多くの人がPCでeコマース(ネットショッピング)をしていました。一方、ガラケーの画面の大きさは、3センチ×5センチの大きさ程度でした。「この小さな画面で買い物をする人がいるわけがない」というのが市場全体の常識や共通認識でした。しかし、インターネットがモバイルデバイスに浸透していって、通信速度が速くなると、画面は瞬く間に大きくなるはずで、もし画面が小さくてもガラケーで買い物をしたい若者は必ずいるはずではないかと。そうすればeコマースの市場がパソコンからモバイルに移ってくるのではないか。このように予測を立ててはじめたのです。

---:人よりも最も先に新時代を信じて動けるかどうか。2番手ではなく1番でなければいけないわけですね。

中島氏:サービスの業界は先行者メリットが非常に大きいです。スタートアップが成功した後から参入すればよいのではないかという意思決定をするとその時点で負けとなるような業界です。

---:スピードが求められますね。失敗も受け入れるのでしょうか?

中島氏:意思決定のスピードが非常に重要だと思います。また失敗した人にバツをつけると誰もリスクをとらなくなってしまいます。

例えばDeNAから生まれた個人間カーシェアのAnyca(エニカ)も「個人間でクルマなんてシェアしない」という意見を持つ人もいるでしょう。しかし「シェアしたいというニーズは必ずあるだろうから、やってみよう」とスピードよくゴーサインが出せるかどうか。企業文化の違いがでるかと思います。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。

自動車はコモディティ化しない
中島氏:インターネット・AI×モビリティをはじめたころは、自動車もコモディティ化すると思っていました。しかしこれまでの活動を通してよくわかったことは、自動車産業が100年積み重ねてきたものは非常に大きく、簡単に真似できるようなことばかりではないということです。

「自動運転時代」新幹線のような都市交通パッケージで海外輸出
中島氏:自動車がコモディティ化しないとしても、自動運転時代に備えて、自動車メーカーもビジネスモデルを変えていく必要があります。新幹線業界を参考にするとよいかもしれません。新幹線は車体、軌道、架線、車両マネジメントシステムなどをパッケージし、サービスとして提供しています。そして、新幹線を他国が街で走らせることになった時には、フランス、ドイツ、日本から提案し合う国家間競争になっています。ロボットタクシー※も同様な国家間競争になるのかもしれないと予測しています。※「ロボットタクシー」は株式会社ディー・エヌ・エーの登録商標。

新幹線のように車両は自動車メーカー、サービスはDeNAのような会社、オペレーションは旅客運送事業者というパッケージで、着脱可能な関係ではなく、非常に高度にすり合わせた一つの都市交通パッケージになるかと思います。

自動車はこれまで販売台数を増やすことが目標でした。しかし自動運転時代では、自動車も事業スキームの中に入ってしまうため、最適な台数を売り、稼働率を上げ営業利益を出するようになるのではないでしょうか。

---:他国ではグローバル全体から市場を組み立てるところもあります。どのような順番で組み立てていますか?
中島氏:日本の場合、自動車産業は自国の産業育成の観点も非常に高いので、自国の日本スタートになるのではないでしょうか。またゲームと同様に交通もローカライズが非常に大切です。

---:どんなことに気を付けたいですか?
中島氏:日本のインターネット産業は海外のインターネット産業に軒並み負けてしまっています。スマートフォン向けのゲームのコンテンツプレーヤーなどは、プラットフォーマーに手数料を支払わなければなりません。

自動車は所有の時代は日本連合としてグローバルで勝ってきました。しかしこれから5年くらいをかけて所有から利用にシフトしていくわけですが、インターネット産業のようにならないようにする必要があります。

モビリティサービスはまだ第一コーナーを回ったところです。まだまだこれからです。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。

《楠田悦子》

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