東急電鉄、緊急点検の現場公開---渋谷駅の終電後から始発前

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触手点検を加えた緊急点検を公開した東急電鉄
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  • 触手点検を加えた緊急点検を公開した東急電鉄。取材に応じる伊藤篤司電気部統括部長
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東急電鉄は7日、終電から始発の限られた時間で行われる点検業務現場を、報道陣に公開した。

点検業務が公開された現場は渋谷駅。点検のために割り当てられた時間は、2時間30分程度。すべての列車が車庫に入ったことを確認した深夜1時30分から開始し、撤収作業も含めて、駅業務開始前の早朝4時頃までには終了しなければならない。

公開された点検は、軌道から高さ約6メートルの天井にあるき電ケーブルや、トンネル側面に張り出すように設置された棚(ラック)に敷設された信号ケーブル、ホーム下の側溝(トラフ)にはわせた高圧配電ケーブルなどを、手作業で点検する作業だ。

東京メトロと渋谷駅で接続する田園都市線は昨年、停電による輸送障害が10月と11月に連続して発生した。いずれも渋谷駅~用賀駅まで地下区間に設置された電気ケーブルの損傷によるショートが原因だった。同社は緊急点検を実施。ケーブルを眼で見る「目視」点検に、手で触る「触手」点検を加えて、こうした障害を繰り返さないための対策を講じた。

公開でわかった触手点検とは、布でケーブルをさすりながら手触りで、損傷を見つける作業。まるで黒く積もったほこりを拭い去る掃除でもしているように見えるが、損傷があると「手触りにひっかりがある」(作業担当者)ためにわかるという。

ただ、こうしたケーブルは、もともと簡単に手の届く場所には設置されていない。天井はタイヤと鉄輪を道路と軌道を走ることができる使って走る軌陸車を使い、トラフに敷設されたケーブルは、中腰で屈み込んで重さ数十kgのコンクリート製のふたを持ち上げたり、人がはまりこむような溝に入り込まなければ届かない。オレンジ色の作業服は、ほこりで全身真っ黒になっている。

これを1班数人で分業するのだが、1夜で可能なのは200mほど。1か月以上にわたって延べ約2120人を動員し、281か所の傷を発見して補修を完了した。

「ケーブル敷設後には必ず検査を行うが、これまでは機能検査を重視し、ケーブルが正しく敷かれているかという観点での検査は行われていなかった。今回の緊急点検で停電の可能性は確実に下がっている。お客様にはご迷惑をおかけしましたが、安心してお乗りいただけるようになりました」(電気部・伊藤篤志統括部長)

同社は来年度に向けて、緊急点検による状態が継続される仕組みづくりを、構築する。

《中島みなみ》

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