アーロンチェア リマスタード の開発責任者が語る、企業とデザイナーの良い関係

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アーロンチェア リマスタード
  • アーロンチェア リマスタード
  • アーロンチェア リマスタード
  • 開発プロジェクトを指揮したトーマス・ニアガートVP
  • 新旧アーロンチェアの比較。左が従来モデル
  • リクライニング機構はいっそうコンパクトになった
  • 背もたれの裏にあるパッドは腰部と仙骨をサポートするデザインに変更された
  • 座面と背もたれは部位ごとに3段階のテンションに分けられ、身体のホールド性を向上させている
  • 挨拶するハーマンミラージャパンの松崎勉 社長

ハーマンミラージャパンは1月25日、「アーロンチェア リマスタード」を発売。これに合わせ米国本社から開発プロジェクトのリーダーが来日し、24日にイエローコーナーアンテナショップ丸の内(東京・千代田区)でローンチイベントを開催した。

アーロンチェアは1994年に革新的な高機能デスクチェアとして発売され、世界的な成功を収めている。そしてその形状や機能といった基本デザインはそのままに人間工学の進歩、素材技術や製造技術の進化、そして市場やユーザーのワークスタイルの変化などを反映させて「リマスター」したものが今回の新製品となる。

イベントでは米国本社の副社長で、今回のプロジェクトではリーダーとして開発を指揮したトーマス・ニアガート氏がプレゼンテーションをおこなった。「商品については、長々とは話しません」と前置きしつつ、アーロンチェアとその「リマスター版」の開発の背景やコンセプト、さらに同社のデザインにたいするスタンスといった内容が語られた。

まず冒頭で述べられたのは、同社の商品に携わったデザイナーたちへの敬意だ。「ハーマンミラーは100年以上の長い歴史を持ち、世界的な知名度を得ていますが、これは経営陣だけが成し遂げたものではありません。製品を手がけたデザイナーたちそれぞれが名声を得たからだと思っています」

そして創業者の考えは「会社のリソースを、デザイナーをサポートするために費やす」というものだったという。「会社が求めることをデザイナーにやらせるのではなく、デザイナーの創造性のために会社がリソースを割くべきだ、というのがフィロソフィです」として、チャールズ/レイ・イームズやイヴ・べアールといったデザイナーの作品を一例として紹介した。「どんなデザイナーと仕事をするときも、デザイナーのビジョンを達成できるようサポートしてきました」とのことだ。

それでは、アーロンチェアの場合はどうだったのだろうか。ビル・スタンフ、ドン・チャドウィックという2人のデザイナーが、新しい椅子のアイデアと試作モデルをハーマンミラーに提案したのは1989年。深くそして楽にリクライニングできる機構と「サーマル・コンフォート」(皮膚温度の快適性)を追求するという提案は、革新的で挑戦しがいのある課題として開発に取り組むことにしたという。

機能性と審美性の両立を目指して4年を費やして商品化したが、発売前のフォーカスグループ調査では「発売しないほうがいいのでは。こんな椅子はいままで見たことがないから」という否定的な意見もあったという。しかし実際には、販売台数が全世界で700万台を超えるという大成功を収めている。従来製品を超えた高い機能性が、新しい美の基準を創出したといえよう。

ではなぜ、それほど成功している商品を、ふたたびデザインする必要があったのか。「もっと良くすることができるとわかった。だからやることにした」 というのがニエガート氏のシンプルな答え。「30ヶ月前、ドン・チャドウィックとともにアーロンチェアの再創造、リ・デザインやリ・エンジニアリングをはじめました」とのこと。

結果的に外見はオリジナルを踏襲したものとなったが、これは2人のデザイナーが掲げた「座っていることや椅子の存在を忘れてしまうほどに快適な椅子を創ろう」という初期のビジョンが高いレベルで達成され、時代を超えてもなお有効だと判断したためなのだろう。

ただしすべてが現代の水準で見直され、とくに身体のサポート性は大幅に向上されている。「機能をさらに高め、素材の使用量を減らし、より視覚的に美しくしました。そのまま流用している部分はひとつもありません」という。実際に新旧モデルをじっくり見比べると、あらゆるディテールがいっそう洗練されていることに気づく。座り心地や操作感と同時に、美しさも進化しているのだ。

《古庄 速人》

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