日産アートアワード2015発表…グランプリは毛利悠子氏が獲得

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グランプリに輝いた毛利悠子さん(右)。左はオーディエンス賞を獲得した久門剛史さん
  • グランプリに輝いた毛利悠子さん(右)。左はオーディエンス賞を獲得した久門剛史さん
  • グランプリ獲得作品「モレモレ:与えられた落水 #1-3」
  • 授賞式ではゴーンCEOが表彰状を日本語で読み上げ、受賞者を驚かせた
  • ファイナリスト7名と審査員、そしてゴーンCEO
  • カルロス・ゴーンCEO
  • 中村史郎CCO
  • 審査委員長の南條史生・森美術館館長
  • カムデン・アーツ・センターのジェニー・ロマックス館長

日産自動車は11月24日、日本人の現代アーティストを対象とした『日産アートアワード2015』のグランプリを毛利悠子さんに決定。ファイナリスト7名の作品を展示しているBankART Studio NYK(神奈川県横浜市)で発表記者会見と授賞式を開催した。

このアワードは日本人アーティストによる現代美術を対象としたもので、2013年にスタート。隔年で開催され、今年で2回目。今回のグランプリに選ばれた毛利さんの作品『モレモレ:与えられた落水 #1-3』は、駅構内で目にする、雨漏りを処理するためのビニールやペットボトルなどに注目したもの。

2009年から写真によるフィールドワークを重ね、その集大成として、漏れを作り出し、同時にそれを集めて溜める循環システムを創作。水の流れに都市の姿を重ね合わせて立体化したものだ。「資金と場所を提供してもらえて、いろいろな人の意見を聞きながら制作できたのがよかった。また元気に、どんどん作品作りができたらと思っています」と毛利さん。

毛利さんにはトロフィーや賞金のほか、ロンドンにあるアート施設、カムデン・アーツ・センターに2ヶ月滞在する権利が与えられた。このほか、展示会の一般来場者による投票で決定する「オーディエンス賞」は久門剛史さんが受賞している。

審査委員長の南條史生・森美術館館長は毛利さんの作品を「ルーツを駅の水漏れという”社会の現場”に置きながら、マルセル・デュシャンの引用や、時間、音の導入など、多様なメディアやコンテンツを含んだ作品に昇華させ、作者自身の新たな境地を感じさせるものでした」と評価した。

またアワードの意義について「これからの日本の現代美術の基盤を作ってゆくことに貢献できるといいんじゃないかと思っている」と南條審査委員長。「国際色豊かな審査員たちは、日本の中で日本人が見るのとは違う、外からの目で議論して選んでいます。現代美術というのはグローバルなアジェンダ(検討課題)です。国内で評価されるだけではいけない。海外で活動して認められ、いろいろな人との間に対話が生まれることが重要」と語る。

日産自動車の中村史郎COOによれば、ファイナリストの作品はすべて日産自動車の所蔵品となり、将来は社外での展示も計画しているという。「日産は、新たな創造につながる試みというものに心を傾けています。今後もこのアワードを通じて、日本の文化の発展に貢献していきたい」とのことだ。またアワードがカルロス・ゴーンCEOの先導で、次世代へ続く文化発展活動としてスタートしたことも語られた。 狙いは、才能ある日本人アーティストのプレゼンスを高めることだという。

ゴーンCEOは「アワードを通じて、日本のデザインが持つパワーとインパクトを讃えたいと考えています」と語る。そして「日産は、ホームマーケットである日本の持つ、豊かで比類なき芸術文化の恩恵を受けています。日本の芸術文化に敬意を表し、そしてお返しをするために、アワードを設立することにしました」と説明。

「豊かなアートの世界は地域社会に恩恵をもたらし、経済をより強くし、互いを尊重して理解する環境を育てると考えています。だからこそ日産はこのアワードのような取り組みを通じて、日本の芸術文化を強化することを約束します」とゴーンCEO。

しかし興味深いことに、このアワードの審査員に日産の関係者は含まれていない。それはなぜか。「日産は中立的な立場です。介入を避けるため、審査には参加していません。これは、国際的な知名度のある専門家に選んでいただく必要があるからです。受賞者は日産が選ぶのではなく、アートのスペシャリストが選ぶということです」とゴーンCEOは説明する。

また審査員として参加したカムデン・アーツ・センターのジェニー・ロマックス館長は「ぜひ、他のアーティストと交流を深めていただきたい。わたしたちも、いろいろな人を紹介していきたいと考えている」と語る。「自分の作品を違った文脈で見る機会になるでしょうし、作品を初めて見る人にどう語りかけるかを考えるチャンスにもなると思います。肥沃な土壌で双方向のコミュニケーションができるはずなので、日本から迎えるのを楽しみに待っています」。

ゴーンCEOも「日本人アーティストとグローバルなアート界との絆が深まることを願っています」とエールを送る。なおBankART Studio NYKでの展示は12月27日までおこなわれている。

《古庄 速人》

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