不良在庫削減と人員最適化を実現する「インダストリー4.0」とは…ボッシュ ロイトリンゲン工場

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ボッシュ ロイトリンゲン半導体工場
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ドイツ・シュツットガルトの郊外、ポルシェの研究開発センターがあるヴァイザッハにほど近いロイトリンゲンに、“インダストリー4.0”の考え方が導入されたボッシュの半導体工場がある。

そもそもインダストリー4.0とは何かというと、高度にIT化された(とりわけ通信でクラウドに接続された)生産設備を備えるスマート工場によって少量多品種生産を可能にし、製造面の効率化だけでなく需要/供給までの流通面も見据えた製販一体の生産システムを全世界共通のプラットフォームの上に構築することを目指す取り組みをいう。

ボッシュのロイトリンゲン工場は、こうしたインダストリー4.0の考え方を他に先駆けていち早く取り入れた半導体工場だ。ここでの要点は、通信に接続された生産設備(Machine to Machine Communication:R2R)による収集した情報の可視化から、エラーの検出・通知と未来のトラブル予兆の発見、さらにはトラブルによる不良製品の発生を最小限に抑えるための機器の制御を自動でおこなっているという点だ。

ボッシュではこれを「リアルタイム・ディスパッチャー(RTD)」および「マニュファクチャリング・エグゼキューション・システム(Manufacturing Execution Sytem:MES)」と呼ぶが、他所では「ダイナミック・ケース・マネジメント(DCM)」などと呼ばれるものと類似する考え方と言える。

この工場では、ライン上を流れる半導体ウェハをリアルタイムで監視し、微細なプロセスの誤りを即座に検知(フィードバック制御)、不良品が多数発生してしまう前に正しいデータを指令(フィードフォワード制御)して生産の最適をおこなう。

それまでは専門のエンジニアが張り付いて、長年の経験や勘を頼りにエラーの発生を検知していたが、あまりに属人的であり生産性は決して良いとは言えない。ボッシュでインダストリー4.0の概念を2013年に導入するに当たり、半導体の生産ラインを大幅に見直して生産設備とエンジニアの最適配置をおこなったという。

ボッシュでインダストリー4.0プロジェクトを統括するヨアヒム・フランゲン氏によれば、「インダストリー4.0の導入によって生産性は10%向上した。在庫の削減にも大いに効果を発揮しており、インダストリー4.0が当社にとって大きな恩恵をもたらしてくれることは間違いない」と断言する。

フィードバック/フィードフォワードによる問題の発見から修正、そして検証に至るサイクルは確実に短縮されたという。単一技能の職人エンジニアをより生産性の高い業務へシフトする効果も期待できる。ただ、足元を見るとVWの不正プログラム問題による大規模なリコールや移民問題など、ドイツ産業を取り巻く情勢には不安要素もある。また、スマート工場化のための投資も莫大で、それに見合った効果が確実に得られるかはまだ未知数。インダストリー4.0どのような恩恵をもたらすか、その真価はそう遠からず明らかになるだろう。


《北島友和》

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