東京から鹿児島へ、LCCと格安レンタカーでダイナミックに旅してみた

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東京から鹿児島へ、LCCと格安レンタカーでダイナミックに旅してみた
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低価格航空会社(LCC)の就航でいきなり平均コストが下がった国内旅行。「シートピッチが狭い」「手荷物重量の制限がきつい」「欠航に伴う便変更や払い戻しの柔軟性が低い」といったネガティブ要素を指摘する声も少なくないが、大荷物を持つ必要性が低く、フライトデュレーションも短い国内旅行ではそれらのマイナス要素の影響は小さい。ということで、LCCの1社、オーストラリア系のジェットスターを利用して鹿児島の薩摩半島南端・長崎鼻までローコスト旅を試してみた。

ジェットスターの拠点は新東京国際空港、すなわち成田空港。東京~鹿児島の第1便、GK621便は早朝に飛ぶため、搭乗するには京成線の始発、成田空港行きに乗る必要がある。各駅停車で延々と成田まで行くのは手間だが、優等列車を利用できる時間帯であれば、東京の東側に住んでいる人たちにとっては言うほど利便性が悪いわけではない。

今年4月に完成したLCC主体の成田空港第3ターミナルは空港の外れのほうにあり、成田空港第2ターミナル駅から徒歩またはバスで移動する。すでにいろいろな利用経験がネット上にアップロードされているが、この第2、第3ターミナル間の移動は結構な労力だ。両ターミナルを結ぶ徒歩通路は公称630mとなっているのだが、京成改札口からスタートラインに着くまでに結構な距離があり、ターミナルにゴールインした後もさらに数百m歩く必要がある。バスに乗ればその労力は軽減されるが、時間的には早歩きしたほうが微妙に早着する。なかなか悩ましいところである。

LCC、ジェットスターに乗り込む。機体はリージョナルサイズのエアバス『A320』。シートレイアウトはエアバス社が最大値に設定している(左3席+右3席)×30列の180席で、足元空間はもちろん極小だ。が、短時間フライトでも我慢できないほど狭いわけでもない。筆者はプライベートでの海外フライトではもっぱらノーマルエコノミーを使っているが、航空会社によっては前の席が少しリクライニングするだけで膝がくっつきそうなほどに狭く、それと大差があるとは思えなかった。もっとも狭いことに変わりはなく、後ろのパセンジャーがひざをシートバックにくっつけ、自分の腰に当たったりして煩く感じられることがあるのも事実だ。

運賃はそのちょっとした我慢に報いるに十分な安さだった。6月末に鹿児島に向かう便でターミナル利用料380円を含んで7360円、7月初旬の復路は会いに行くよキャンペーン料金で割安だったため、同4360円。海外のLCCに比べると割高とはいえ、往復1万1720円の航空運賃で鹿児島旅行ができてしまうのは、国内旅行の活性化には間違いなくプラスだろう。

鹿児島空港に到着後、レンタカーを借りる。こちらもレンタカー界のLCCのような存在の代表格であるニコニコレンタカーだ。04年のレンタカー規制緩和にともなって搭乗した格安レンタカーの基本的なビジネススタイルは、車両費用が安くてすむ古いクルマを格安で貸し出すというものだ。

過去にいろいろなところで格安レンタカーを借りた経験に照らし合わせると、看板のブランドもさることながら、フランチャイズに加盟している業者によって当たりハズレが大きい傾向があり、当たりの確率が高いのは、自動車整備業者や、自前の整備工場を完備している中古車ディーラー。

ニコニコレンタカー鹿児島空港入口店は整備業者が母体で、以前に借りたときに整備状態の良さや行き届いた清掃などで非常に印象が良かった店舗。またニコニコレンタカーの場合、ホームページにアクセスすると予約可能なクルマの個体が表示されるため、クラスや禁煙・喫煙といったざっくりとした区分けでなく、乗ってみたいクルマを直接予約できる。今回チョイスしたのは、旧型となったスズキ『アルトエコ』。復路便の時間まで60時間分のレンタル代は9600円。堂々たるローコストレンタカーぶりだ。

そのレンタカーで向かったのは、薩摩半島南端の岬、長崎鼻。砂蒸し温泉で知られる指宿から長崎鼻、開聞岳を経て枕崎、さらに鑑真和上上陸の地である坊津に至る海岸線、また内陸には特攻基地があった知覧、オオウナギの生息する池田湖などの観光資産を擁する南薩エリアは、ジモッティーの名にかけて文句なしに旅先候補として太鼓判を押せる場所のひとつだ。

薩摩半島は亜熱帯と温帯の植生が入り交じる県だが、とりわけ晴れの日に鹿児島市心部から国道225号線を長崎鼻方面に南下すると、気候の境目が如実に感じられる。石油基地のある喜入あたりで急に太陽光のエネルギー感が増大し、山の植生ももこんもりとした密林風に変化していく。長崎鼻の少し手前には北緯31度線が走る。この時は立ち寄らなかったが、夏には鉄道最南端駅である指宿枕崎線西大山を中心とした平原は一面にひまわりが咲き乱れる。陽光の強さと相まって、その様は南仏アルルやフォンヴィエイユ郊外の如しである。

長崎鼻は岩場に多数のタイドプール(潮だまり)ができる岬である。夏場にはその潮だまりの中にサザナミヤッコやチョウチョウウオ、クマノミなどの熱帯魚が泳いでいるのが見えたりと、実に楽しい場所だ。大きな潮だまりは深さ数mあり、子供でも低リスクで素潜りにチャレンジできる。また、岬から見る開聞岳の容姿は絶景。視程良好な日は屋久島を望むこともできる。駐車場のある長崎鼻パーキングガーデンでは絶滅危惧種の生物の研究や繁殖が行われている。とにかく時の流れが緩い、安息に浸れる場所なのである。

そんなルートを走る足に使った旧型アルトエコ。スズキで初めて減速エネルギー回生機構「エネチャージ」を装備したエコカーだ。回ってきた個体は初期型でJC08モード燃費は30.2km/リットル。オドメーターは5万km台と、適度に使い込まれた状態だった。

実際に使ってみると、走り、内外装とも経年劣化が目立つようなところはほとんどなく、気持ちよく走れた。整備状態が良かったということもあろうが、アイドルストップシステムの作動状況も良好だった。燃費は現行アルトに比べるとやや劣るが、それでも1~3名乗車、エアコンONという条件で300km弱を走った結果、満タン法で24km/リットル台と悪くなく、今日の基準でみても十分にエコカーと呼べる範疇にあった。

今回の旅で使った交通費はエアチケット、レンタカーおよびガソリン代、空港までの往復の電車賃を合わせて、およそ2万5000円。LCCと格安レンタカーを併用すれば、一人旅でも格安でダイナミックな旅行をすることができる時代になったのだと実感した。グループであれば1人あたりのレンタカー代、宿泊代の負担はさらに軽くなるだろう。気まま旅、おすすめである。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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