26日から日本でも発売され始めた仏・netatmo(ネタトモ)社のスマートホームカメラ「Welcome」。家庭用のいわゆる防犯カメラでありながら、顔認識技術を搭載した世界初のコンシューマー向けIPカメラとなる。
今回、日本での発売開始に合わせて来日していたnetatmo(ネタトモ)社のCOO・Matthew Broadway(マシュー・ブロードウェイ)氏へのインタビューの機会を得たので紹介していこう。
●日本は革新的な技術に対して感受性が高い国
-まず今回、日本で販売しようと思った経緯を教えて下さい。
「Welcomeを日本で発売したのには、3つの大きな理由があります。1つ目が、コンシューマー向けの市場として、とても大きいこと、2つ目が、革新的な技術に対して日本はとても感受性が高く、受け入れてもらいやすいということ、3つ目が、今後、アジア市場に参入していく際に、日本で受け入れられれば、とても大きな信頼とブランドを得られることが挙げられます。また、日本の市場動態を見た時に、高齢化社会に伴い、離れて暮らす家族の安否確認をしたいというニーズの高まりや、スマートフォンの高い普及率も挙げられます。我々の製品は、スマートフォンと密接なものですし、受け入れらるという手ごたえを感じたのが日本を選んだ理由です」
●端末代だけで収益化させようとするワケ
-「Welcome」は、29,800円(税込)のカメラを買えば、あとは完全無料で使えるサービスなワケですが、月々の利用料で収益化している日本の既存のホームセキュリティ製品やサービスと比べると『安い』という印象を持ちます。その辺は、どういった考えのもとに価格設定されているのでしょうか?
「まず最初に我々もビジネスでしているので、収益性は十分に検討した上での価格設定ですのでご心配には及びません(笑)。確かにもう少し高い価格設定で販売することも考えましたが、よりたくさんの人たちに届けることを考えたら妥当な価格設定だと考えます。また、月額利用料などを頂かないのは、我々が『自分の家の映像を見るのになぜお金を払わなければならいのか?』という基本的な考えを持っているからです」
●大切な家族の映像だからこそ自分で管理する
-日本の監視カメラのトレンドとして、クラウドへの映像保存が注目されていますが、「Welcome」は、SDカードへの保存ですね。今後、クラウド保存という方向性は検討されているのでしょうか?
「答えはノーです。我々は、意識的にクラウド保存という選択肢を選ばなかったからです。ホームセキュリティ用のカメラは、家族との親密かつプライベートな時間を高画質で映し出すもの。そうした映像を第三者であるクラウドサービスに預けるということには、大きな抵抗を感じるからです。また、サイバー攻撃などによるプライバシーの流出の可能性も捨て切れません。そのため、我々はカメラ本体で映像の保存を完結できるSDカードを選択しました」
-今後の日本での展開を教えて下さい。
「9月にWelcomeと連動する“Welcomeタグ”という製品の投入を予定しています。このタグは、ジャイロセンサーと加速度計を搭載したもので、バイクやパソコン、絵画など、自宅にある大切なものが盗難されないように見守るための製品となります。もちろん物だけでなく、ドアや窓に設置すれば、開閉時や破壊されたことを通知できるセンサーとしても活用可能です。また、2016年1月にラスベガスで開催される“CES”では新たなセキュリティ製品の発表も予定しているので、楽しみにしていて下さい」
家族や財産、家を守るといった基本的なセキュリティ思想は共通するものの、随所で日本とは異なる価値観を示してくれたブロードウェイ氏。「顔認識技術を家庭用カメラに持ち込んだことで、日本のホームセキュリティを新たなステージに引き上げたい」と力強く宣言し、インタビューは終了の時間となった。