【GARMIN Oregon 650TCJ2 インプレ後編】拡張性十分、過酷な環境ほどその真価が現れる

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本体を横向きにすると、メニューもランドスケープへと切り替わる。
  • 本体を横向きにすると、メニューもランドスケープへと切り替わる。
  • メイン画面の内容は自由に変更できる。カスタマイズ性が高いのもGARMIN製品の特長だ。
  • 地図は数種類をインストールすることができ、表示方法もカスタマイズすることができる。
  • GPSの感度は高く、上級が開けている場所なら安定して10メートル以下の誤差で即位できる。
  • 3軸電子コンパスを搭載。移動しないと方角を測定できないGPSの弱点を補う。
  • トリップコンピューターで移動距離や平均速度を表示することができる。
  • 高度の推移もグラフで表示できる。GPSは位置を高精度で測位できるが高度は誤差が大きい。それを補うために気圧高度計を装備している。
  • 目的地を検索して、カーナビとして使うことが可能だ。

どんな山奥にいても、原野の真ん中や海上にいても、現在位置や方角が瞬時にわかるのがハンディGPS。スマホでもGPSは使えるが、過酷な登山を想定して作られた専用モデルは、スマホとは根本的に違う。山には山が似合うGPSがあるのだ。そのハンディGPSの定番モデルであるGARMINの「Oregon 650 TCJ」が650 TCJ2へとバージョンアップした。インプレ後編ではその使い勝手を実際に試してみた。

◆高感度GPSで登山ルートをガイド

本機の機能は多彩だが、その核となるのはやはりGPSだ。内臓のパッチアンテナは小型ながら高感度で、日本の準天頂衛星みちびき、ロシア版のGPSであるGLONASSにも対応。受信できる衛星の数が非常に多いので、山の斜面や頭上に木が生い茂ったような上空が開けていない状況でも、非常に正確に現在位置の測位が可能となっている。

本機に搭載された平均位置測定という機能を使うと、その精度がさらに向上する。これは連続して何度も測定を行い、その平均値を現在位置としてポイント登録する機能だ。全く目印のない山の中でも正確に位置を記録することができる。

ちなみに、スマホのGPSは山奥などで通話圏外になると、精度が落ちたり使用できなくなってしまう場合が多い。これは、スマホでは測位にGPSだけでなく3GやLTEのセルラーネットワークも活用しているからだ。また、GPSが正常に機能しても、地図アプリなどGPSを活用するためのアプリが、圏外ではデータをダウンロードできず使えないといったケースもある。

スマホのGPSは3GやLTEの基地局、あるいは無線LANを多く補足できる街なかでは極めて高精度だ。GPSをまったく利用できない地下街でも数メートルの誤差で測位できるのは驚くほかない。しかし、圏外になるととたんにその実力を発揮できなくなる。根本的に山岳地で使うことを想定していないので、F1マシンでオフロードコースを走るような状態になってしまうのだ。

◆登山やトレッキングに必要な機能を満載

もちろん本機には地図データも格納されており、現在地の地図を表示したり、目的地を指定してルートガイドをさせることも可能だ。ルート検索は「直行」「徒歩」「バイク」などから選ぶことができる。ルート編集機能により、あらかじめ登山ルートを作成しておいて、そのとおりにガイドさせるといったことが可能だ。また、本機はワイヤレス通信機能を搭載しており、登録したルートやポイントを他のGARMINのハンディGPSに転送できる。2人以上で行動するときも、すぐにデータの共有ができるのだ。

また、ルート検索で自動車を選べば、簡易的ながらカーナビとして使うことも可能だ。市街地向けにプリインストールされている地図は「1/20万DEM付き日本全国概略道路地図」のみだが、「日本詳細道路地図(シティナビゲーター)」を別途購入すれば、簡易的とはいえ、侮れないカーナビとなる。

GPS関連以外では、本機は気圧高度計や3軸電子コンパスを搭載している。気圧高度計は正しく校正された状態なら誤差は3メートルほどとかなり正確。また3軸電子コンパスは言うまでもなく方角を示すものだが、通常の電子コンパスが本体を水平にしないと使えないのに対して、3軸電子コンパスは本体が垂直でも正しく方角を示すことができる。なお、温度計がないことに気づいた人もいるかもしれないが、温度は正確な外気温を測定できるワイヤレス接続の温度センサーを別途購入することで、測定可能となる。

こうした基本的な機能をベースにした応用的な機能も豊富だ。トリップコンピューター機能により移動した軌跡を保存したり、移動した距離や時間、平均速度を表示することができる。同様に高度グラフ機能で、移動に伴う高度の変化をグラフで表示することができる。指定したポイントに近づくとアラームを鳴らしたり、日の出、日没の時刻を表示する機能などもある。

ハンディGPSでありながら、本格的なカメラ機能を搭載しているのも本機の特徴だ。画素数は8Mピクセルで、これは「iPhone 6と同じ」。もちろんパンフォーカスではなくちゃんとオートフォーカスになっており、ディスプレイをタッチすることでズームも可能だ。また、LEDライトのフラッシュが装備されたことで、暗い室内でも撮影が可能になった。

レンズについてはスペックが公表されていないが、撮影した画像のEXIF情報によれば、焦点距離は4.1mmで、35mm換算だと31mmとなっている。光学ズームがない単焦点レンズとしては適切な焦点距離だろう。F値は2.7とかなり優秀だ。実際に撮影した写真を見てみると、正直に言って昨今のスマホには劣るものの、どんな条件でも無難な描写だった。特別にキレイではないが、失敗写真にもならないといった印象で、とくに逆光に強いのは心強い。もちろん、撮影した写真には位置情報がジオタグとして埋め込まれる。

◆フィットネスギアやアクションカメラのリモコンにも

システムとしての拡張性の高さも本機の大きな特徴だ。GARMINはハンディGPSだけでなく、カーナビやフィットネス機器でも世界有数のブランドとなっており、多くのGARMIN製品は別ジャンルの製品と連携して幅広いう用途に使えるようになっている。カーナビとしても使えることはすでに紹介したが、本機はサイコン(サイクルコンピュータ)やランニングウォッチとしても使用可能だ。

フィットネス機器の無線接続規格であるANT+に対応しているので、自転車のスピード/ケイデンスセンサーやハートレートセンサーなどを接続することができる。ランニングウォッチとして使うのはボディサイズや大きさからちょっと無理があるが、サイコンとして使うのは問題なく、機能的にも遜色は全く無いといっていいだろう。問題があるとすれば、自転車にかっこよくマウントするのに少し工夫が必要なことくらいだ。

また、GARMINはアクションカメラ「VIRB-J」を発売しているが、本機はそのリモコンとして使うこともできる。トレッキングの記録を映像に残すといった場合にも、カメラ本体に触れること無く、本機でさまざまな操作が可能だ。

ここまでスマホと本機を比較してきたが、実は本機はブルートゥースを搭載しており、スマホと接続することもできる。GARMINのアプリを使うことで、スマホを介して本機をネット接続することが可能。GARMINのクラウドサービスに保存しておいたルートを現地でダウンロードして使うといった高度な活用ができる。

《山田正昭》

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