デンプスターの時事番組「7.30」終了
保守連合のABC、SBS攻撃は長年にわたって執拗に続けられており、20年近く保守政治家からの「ABCの偏向報道」苦情で何度も報道審査が行われ、その度に「偏向報道」を否定する報告が出されていた。トニー・アボット保守連合は野党時代からルパート・マードック系メディアとの連携で大々的なABC攻撃を展開、最終的に海外放送の打ち切りやABC、SBSの予算削減という兵糧攻めを実行した。ただし、国民のABC信頼度は高く、特に国民党支持層の大きい農村部ではABC放送は農業の科学から経営、貿易まで正確で綿密な報道を行ってきており、もっとも信頼できるメディアになっている。そのため、保守連合の異様なほどのABCに対する敵意と兵糧攻めは保守連合にとって諸刃の剣になる可能性もある。
ABCテレビの時事番組「7.30」は、ABC所属30年のベテラン・ジャーナリストで鋭い追及で知られたクエンティン・デンプスター氏が看板で、これまでデンプスター氏の政治家追及がしばしば話題になった。ABC予算切り詰め問題でも、アボット首相の公約違反を追及するメディアに対してマルコム・タンブル通信相が常人の理解を絶する詭弁で擁護したのに対して、「bullshit artist(戯言の名匠)」と評するなど、保守連合のABC攻撃に正面から反撃してきた。
マーク・スコットABC会長が予算削減に伴う経費削減を発表しており、その一環として「7.30」廃止も確定していたが、11月28日の「7.30」でデンプスター氏がABCを辞する考えを明らかにした。番組での発言で、デンプスター氏は、「20年近い歳月の後、ABCは地方番組を廃止しようとしている。これまでの視聴者の支援、アイデア、建設的な批判には深く感謝している。30年間働いてきたABCを離れる。この偉大で他に例のない公共放送で働けたことを栄誉に思う。来週12月5日のこの番組は大きな仕掛けを考えている」と語った。
デンプスター氏は1984年にABCに入社、QLD州のビョルケ・ピーターセン国民党政権の独裁的な腐敗政権を摘発したフィツジェラルド調査委員会やNSW州警察の腐敗と犯罪を摘発したウッド特別調査委員会の報道で高い評価を得た。ABCのケート・トーニー・ニュース編成部長は、「デンプスター氏退職は大きな損失だ。氏は30年間にわたってABC放送のニュース制作の手本になってきており、おそれを知らず事実を追及するその姿勢は同僚からも聴視者からも尊敬を称賛を受けてきた」と語っている。(NP)
http://www.abc.net.au/news/2014-11-28/quentin-dempster-quits-abc-after-30-year-career/5926684