JR西日本の軌間変換装置実験線、10月6日に開所式

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敦賀駅構内に設置されるGCE実験線の概略図(上)。けん引車(下右)にけん引された模擬台車(下左)がGCE(下中央)を通過し、軌間変換時の動作などを確認する。10月6日に開所式が行われる予定。
  • 敦賀駅構内に設置されるGCE実験線の概略図(上)。けん引車(下右)にけん引された模擬台車(下左)がGCE(下中央)を通過し、軌間変換時の動作などを確認する。10月6日に開所式が行われる予定。
  • 車輪が車軸に固定されている鉄道車両では軌間が異なる線路に乗り入れることができないが、フリーゲージトレインは車輪の左右間隔を調整できるだめ、新幹線と在来線の直通運転も可能になる。
  • フリーゲージトレインは鉄道・運輸機構が開発した試験車によって走行試験が行われているが、JR西日本は北陸地域で使用する場合の課題に対応した「北陸ルート仕様」の開発を進めている。2016年度中には走行試験を開始する予定。
  • 鉄道・運輸機構が開発した第3次試験車の台車。北陸ルートでの使用に際しては雪対策が重要になる。

JR西日本の真鍋精志社長は9月17日、敦賀駅(福井県敦賀市)構内に整備する軌間変換装置(GCE)の実験線について、10月6日に開所式を行うと発表した。北陸新幹線の敦賀開業に向け、「北陸ルート仕様」の軌間可変車両(フリーゲージトレイン)の開発が本格化する。

北陸新幹線は現在、2015年3月14日の長野~金沢間延伸開業に向けて準備が進められており、金沢~敦賀間も2025年度の開業が予定されている。これに対して敦賀~大阪間は「まだルート選定などの見込みが立っておらず、敦賀開業後の大阪延伸にはかなりの時間がかかる」(真鍋社長)ことから、大阪方面から北陸方面へ向かう場合は敦賀駅での乗換えが必要になる。真鍋社長は「一度の乗り換えによる精神的負担は30分に相当する」として、列車の乗換えを不要にするフリーゲージトレインの必要性を強調した。

フリーゲージトレインは、2本のレール幅(軌間)が異なる線路を直通できるよう、車輪の左右間隔を軌間に合わせて変換する車両。新幹線と在来線の線路の間にGCEを設置し、車両がGCEを通過する際に車輪がスライドして左右間隔を調節する。日本では新幹線(軌間1435mm)と在来線(同1067mm)の直通用として開発が進められており、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が試験車両を使った走行試験を行っている。

一方、JR西日本が開発するフリーゲージトレインは北陸地域での運用が想定されることから、同社は「交直流対応」「耐雪・耐寒」「地震対策」などの課題に対応した「北陸ルート仕様」の車両を開発する必要があるとしている。

「北陸ルート仕様」のフリーゲージトレインは、大阪~敦賀間で在来線の東海道本線や湖西線、北陸本線を走り、敦賀駅でGCEを通過して北陸新幹線の線路に入り、金沢・富山方面に向かうことが想定される。在来線の大阪~敦賀間は直流1500Vで電化されているのに対し、北陸新幹線の電気方式は交流2万5000V/60Hz。両方の電気に対応する装置を搭載する必要があり、機器の小型化や軽量化などが課題となる。

このほか、北陸ルートは日本海側の降雪地帯を走る。機構が複雑なフリーゲージトレインでは、とくに台車に付着した雪を消すための消雪装置などを搭載しなければならない。また、北陸新幹線では地震動の被害を抑制するため、車両に「車両逸脱防止L型ガイド」と呼ばれる金具を設置しており、脱線時にはL型ガイドがレールに引っかかり、車両が左右に大きくずれないようにしている。しかし、L型ガイドはフリーゲージトレインへの取り付けが難しく、工夫が必要になるという。

真鍋社長は、こうした課題を解決するために検討を重ねてきたとし、検討した対策の効果を検証するためGCE実験線を整備し、試験を実施すると述べた。

JR西日本が設置するGCE実験線は長さ約180mで、敦賀駅構内の機関車庫の跡地に敷設。車体が付いていない試作の軌間変更台車(模擬台車)を走らせて軌間変換の試験を実施し、軌間変換の動作や耐久性、降雪時の挙動などの確認を行う。JR西日本の試験のほか、国や鉄道・運輸機構の試験なども行う。

JR西日本は本年度中にもフリーゲージトレイン試験車の設計・製作に着手する方針で、GCE実験線での試験結果も反映させる。計画では6両編成の試験車を製作し、2016年度中に北陸新幹線と北陸本線、湖西線で走行試験を実施する予定だ。

《草町義和》

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