Mozillaが開発を進めるモバイル端末向けOS「Firefox OS」を搭載するリファレンススマートフォン「Flame」が国内で発売された。7月28日の正午に発売され、瞬く間に完売となった本機を入手することができた。今回は一般の方が購入することを想定して、本機のファーストインプレッションを報告したいと思う。
■一般ユーザーも買える開発者向けリファレンスフォン
Firefox Flameは、Mozilla Corporationが今年の2月、バルセロナで開催されたMWC 2014に出展した際に初めて発表した開発者向けのリファレンスフォン。アプリ開発や機能の検証、互換性テストなどに使える“開発者向け”と称されているが、一般ユーザーでもオンラインの「Yahoo! ショッピング OSSストア」から19,980円で購入できる。
端末のスペックについて詳細は割愛するが、OSには最新バージョンであるFirefox OS 1.3を搭載。Qualcomm製Snapdragon200「MSM8210」1.2GHzデュアルコアプロセッサーを内蔵する。ディスプレイサイズは4.5インチで、解像度は854×480画素。メモリは1GBで、開発者がメモリサイズの適性検査が行えるよう256MBまでの範囲で可変としている。内蔵ストレージは8GBだが、microSDメモリーカードが外部媒体として使える。カメラユニットはメイン側が5メガ、イン側が2メガ。
まずはパッケージ開封の儀式から。立派な化粧箱を開けると、本体のほかにmicro USBケーブルとイヤホンが付属品として同梱されている。本体の背面カバーとバッテリーは外されている状態だ。バッテリーはALCATEL onetouchブランドのもので、容量は1800mAh。本体背面にはmicro SDカードスロットのほか、3G/2GのデュアルSIMスロットを搭載する。FlameはSIMロックフリーの端末なので、MVNOのSIMカードなどを装着して国内でも通信ができる。カードのタイプは標準SIMになる。
■使い心地良くシンプルにまとめた「設定」の項目
背面カバーを装着。5メガのカメラユニットと、その隣にはフラッシュが搭載されている。さらにその横にあるのはスピーカーユニットだ。中央にはFirefox OSのロゴをプリント。カバーの地の色はブラックではなくチャコールグレーに近い。本体を手に持ったフィット感は上々。エッジは緩やかにラウンド処理されていて、ケース自体のマットでスムーズな触感が心地よい。
本体の電源を投入すると、使用言語のリストには日本語が見あたらない。日本語入力システムについては今後の追加配布が予定されているようだ。取りあえずはEnglishを選んで起動した。
「設定」アプリを開くとBluetoothやNFC、テザリングの項目が並ぶ。「サウンド」では各種操作音やバイブ機能のON/OFFが選べる。プリセットのシステムリングトーンは15種類が並んでいて、「RingTone Picker」アプリを追加すれば任意の音源に変更もできる。「ディスプレイ」は自動輝度調整に対応。壁紙はギャラリーに保存された好みの写真に変えることもできる。ロック時スクリーンへのノーティフィケーション表示も設定からON/OFFが選べる。
本体へのデータ転送は設定から「USBストレージ」をONにしてから、PCにUSBデバイスとして認識させてドラッグ&ドロップで行う。内部ストレージはアプリケーション用に2GBが確保されていて、残りがメディアストレージとして割り当てられている。ストレージの使用状況は設定画面上でモニターできる。さらに「Improve Firefox OS」として、Mozillaの開発をサポートするために使用レポートの送信を許可するかを選ぶ項目がある。
■ミニマルな仕様のユーザーインターフェース
本体操作のインターフェースをみていこう。4.5インチのタッチパネル液晶のほかには、フロントパネルの下側に唯一のタッチキーが設けられている。iPhoneの操作になれていればそう違和感はない。右側面にはボリュームボタン、トップには電源ボタンとイヤホン端子、さらにボトムにはUSB端子とマイクがある。
余談だが、買ったばかりの本体にはフロントパネルを保護するフィルムが貼られているのだが、これがインカメラやスピーカーのかたちにピッタリとカットされているので、剥がすのが実に惜しい。きっとこの後しばらく待ったところで「Flame専用」の保護シートはどこのメーカーからも販売されないだろう。フロントパネルの四辺が角丸型デザインになっていることも、この問題をさらに難しいものにしている。他の端末で代用ができそうなシートを果たして見つけることができるのだろうか。
Firefox OS 1.3はフラットデザインのアプリアイコンを採用している。画面のタップやフリック操作のレスポンスはなかなか良い。画面の上端から下側に向かってフリックするとノーティフィケーショントレイが現れる。Wi-FiやBluetooth、機内モードのON/OFFや設定メニューへのショートカットがここに表示されている。
ホーム画面のトップに表示される「I'm thinking of...」の検索ボックスを選択して文字を入力すると、本体にインストール済みのアプリやWebサイトからキーワードに引っかかったものが一覧で表示される。音声による検索機能は付いていない。
アプリを消去する方法はアイコンを長押しすると表示される「×」マークをタップ。iOSと同様に本体からアプリが削除される仕様だ。iOSで言うところのフォルダにあたるのが「Smart Collection」で、同じカテゴリのアプリをまとめておくことができる。作りかたはホーム画面の空いている箇所を長押しして表示されるメニューから「Add Smart Collections」を選択。「Shopping」や「News」などプリセットのカテゴリーから選んだり、ユーザーが名称を決めることも可能だ。
マルチタスクの切り換えは、ホームボタンを長押しすると現在起動しているアプリがページ状に立体的な表示で並ぶので、ここから使いたいアプリを選択する。左上の「×」をタップすればタスクを終了できる。
■アプリの品揃えはこれからに期待
アプリのストアは独自の「Firefox Marketplace」が用意されている。アプリの検索はトップのテキストボックスからフリーワード検索ができるほか、カテゴリーリストから絞って「ゲーム」や「ビジネス」「ミュージック」などジャンルで探すこともできる。アプリの数はまだそれほど揃っていないが、現在は大抵のアプリが無料で提供されている。FacebookやLINE、Twitter、YouTubeなどメジャーどころも見つかった。ただSkypeアプリは見あたらず、マップアプリはノキアの「HERE」が今のところ一番使えそうな感じだ。今後ユーザーの拡大に伴ってさらに充実していくことを期待したい。
エンターテインメント系アプリの使い勝手もチェックしておこう。音楽プレーヤーはWAV/FLAC/アップルロスレス/AIFF/MP3の形式でファイルを保存して、再生ができるか試してみたが、かけられたのはMP3だけだった。ID3タグの読み込みができるので、カバーアートや楽曲情報は正しく認識され、アルバム/アーティスト/楽曲名を条件にしたリスト表示にも対応する。再生画面では楽曲のスキップ、シークバーによる頭出しができたり、星5つでお気に入り評価が付けられる。ショートカットにはファイルをメールやメッセージに添付したり、リングトーンに設定できるメニューもある。オーディオ系ではほかにもFMラジオのアプリが搭載されているが、87.5MHz以下の周波数が選局できなかった。
動画ファイルは「Video」アプリから再生する。ディスプレイの解像度が854×480画素なので、最近のフルHDスマホに見慣れてしまうとまずまずの画質といったところ。MP4形式のファイルは再生ができたが、iTunesで使われているH.264コーデックのM4V形式のファイルが読み込めなかった。
メインカメラで撮影テストも行った。静止画と動画の撮影に対応しているが、レンズはズームができず焦点距離は約2.9mm固定。F値は2.6。タップ操作によるフォーカスやAEのコントロールもできないので、カメラ機能についてはおまけ的に捉えた方が良いかもしれない。
以上、今日までFlameを使って発見できたことを速報的に紹介してみた。まだ荒削りな部分もあるが、Firefox OSの最先端に触れられるリファレンス機として大いに魅力的なスマートフォンだと言える。8月5日には好評につき追加販売も決定した。今度も数量限定での販売になると思われるので、興味のある方はこの機を逃す手はないだろう。